がんについて①〜がんとは何か〜

2人に1人は発症する時代

●自分の細胞が無秩序に増え続ける
●長生きすると、なりやすい
●高齢化の進む日本では、今後ますます増える

21世紀に入って早15年。これまで治療や予防に飛躍的に進歩があったにもかかわらず、がんは世界各国で死亡原因の第1位になりつつあります。
がんが日本人の死因トップに躍り出たのは1981年。それまでの脳卒中を抜いて以来、今も右肩上がりにその数は増え続けています。今や日本人の2人に1人ががんを発症し、3人に1人は亡くなる時代です。

そもそもがんとは「体の細胞に異常が起き、自ら無秩序に増え続けるようになったもの」です。

原因としてよく挙げられるのは、食生活の欧米化(高カロリー、高脂肪、高塩分、低食物繊維など)、運動不足、睡眠不足、肥満、そして精神的ストレスです。これらによって自律神経に大きな負担がかかり、ホルモンバランスが崩れたりして、体にダメージを与えていると言われています。

また、直接的に私たちの体の細胞や遺伝子を傷つける発がん性物質も、身の周りにあふれています。
たばこや放射能、紫外線、農薬などの有害物質は、その代表例。ウイルスや細菌にもそのような働きをするものがいます。とはいえ、それらだけでは、ガンによる死亡の世界的な増加まで説明できません。より関連性があると考えられているのは、平均寿命の延びです。

20世紀、特に第2次世界大戦以降、先進国では栄養と衛生の状態が改善され、医療が進歩しました。
そのために感染症による死亡率が大きく減少。その結果、簡単に言えば、長生きする人が増えたのです。
年齢が高くなると、がんの発症率は確実に上がります。がん死亡率は60歳代から増加し、子売れになるほど高くなっています。

これは考えてみれば当たり前。年をとれば免疫の働きが低下し、遺伝子のコピーミスも増えてくるからです。他の生活習慣病の発症率も加齢で多かれ少なかれ上がりますが、がんは心臓病などに比べてもまだまだ治療の難しい病気なので、相対的にがんによる死亡がより多くなるのです。

要するに、長生きするほどがんになる可能性は高くなり、国全体としても高齢者が増えるほど、がん死亡率は高くなるということです。高齢社会から超高齢社会へと突き進んでいる日本では、がんの患者数・死亡者数ともに、ますます増えるだろうと予想されています。それだけありふれたものと考えておく必要がある、ということです。

がんと癌

がんに関する文章を読んでいると、平仮名で「がん」と書いてある場合と、「癌」という漢字が使われている場合、どちらも見かけますよね。
また、「骨肉種」なども、がんの一種です。これら字によって指す病気が厳密には違うこと、ご存じですか?

まず。「がん」が最も幅広い意味を持ち、本文でご説明しているような病変の一切合切を含み、「悪性腫瘍」とも呼ばれます。
「腫瘍」は、元々「腫れた出来物」という意味で、悪性ではない腫瘍は、がんではありません。

他方、「癌」は上皮に出来たがんを指します。上皮とは、皮膚、消化管などの粘膜、肺胞といった器官の表面を覆っている組織です。実は臓器の多くも上皮由来なので、「癌」がよく使われます。

上皮以外の組織、骨や筋肉、脂肪、神経などに出来るがんが「肉腫」です。{癌」と「肉腫」は腫瘤(かたまり)をつくる固形がんです。一方、腫瘤をつくらないがんもあります。
代表例が「白血病」。血液のがんです。

どうしてがんができるのか

●遺伝子に異常が起きる
●通常は免疫が退治する
●稀に免疫が網から漏らすことがある

ここで、がんがどうやって発生するのか、駆け足で確認しておきましょう。
人間の体には約60兆個の細胞があり、それぞれの細胞は生れてから何度も分裂を繰り返し、全体の調和を保ちながら新陳代謝を繰り返しています。

しかしその途中、遺伝子が体の内外からのストレスによって傷つけられたり、遺伝子のコピーミスが起きたりして、異常な細胞が生まれてしまいます。突然変異です。
この突然変異こそ、制帽のがん化への第一歩。ただ、遺伝子の突然変異そのものは誰にでも毎日、何千何万カ所も起きている現象で、異常をきたした細胞はすぐに死んだり免疫に退治されたりすることで、体全体の秩序が保たれています。

ところが稀に、幾重もの防御線をかいくぐって生き残る異常細胞が現れます。増殖を制御する仕組みの正常に働かない細胞が生き残ってしまった時、それががんとして秩序なく勝手に増え続けていくのです。

がん細胞は自らの活動のため、正常細胞が必要とする養分を奪っていきます。さらに、がんが臓器を直接的に破壊したり、がんから出る毒素が体の機能を害したりします。

こうして患者の体は栄養失調状態になり、脂肪や筋肉などが次第に減って衰弱していきます。
「悪液質」と呼ばれます。がんの人が食べてもガリガリに痩せてしまうのがこの現象。

がんでなくなる患者のうち、4分の1は悪液質が原因とされています。

なぜ免疫は出し抜かれる?

ところで、全身に2兆個もある免疫細胞は、なぜがんを打倒できないのでしょう。
最初に異常な細胞が防御機構をすり抜けなければ、そもそも発症しないはずですよね。

実は免疫細胞のうち、がんを攻撃できるのはごくごく一部です。れだけでなく、がんは増殖を始めると、免疫に発見あるいは攻撃されないよう、様々な策を仕掛けてくるのです。

例えば、分裂・齲蝕を繰り返す中で変異して、がん細胞の特徴を免疫が認識した時には、既にその特徴を持たない細胞に変化していたりします。服装を目印に犯人を逮捕しようとしていたら、犯人がすでに着替えていたようなもの。
これを次々繰り返し、免疫は後手後手に回らされるのです。

さらに恐ろしいのは、免疫を弱める術(免疫抑制)まで持っているところです。
具体的には、がん細胞から免疫の働きを抑制するようなサイトカイン(情報伝達物質)を分泌するのです。
いわば偽命令です。それどころか、免疫細胞が、がん細胞の増殖や転移を手伝わされることすらあります。警察が犯人逮捕に行ってパトカーを乗っ取られるようなものでしょうか。

さらにがん細胞の数が増えると、免疫部隊の駐屯地であるリンパ節に入り込んで(浸潤・転移。事項でご説明します)、その働きを奪います。こうなると免疫細胞の数も減り、いよいよ自力での挽回は望めなくなります。

出典:がんがわかる本