アジア初医療大麻合法化

アジアではまだ嗜好用でも医療用でも大麻を合法化した国はありません。しかし、大麻の原産国であり、大麻との長い歴史を持つ国インドが2017年11月に医療大麻合法化法案を国会に提出しました。もしかするとインドは、アジアで最も早く大麻を合法化する国になるかもしれません。インドにおける大麻事情や歴史についてインドの大麻専門家が答えたインタビューを紹介します。

大麻はインド人の心に多くの思いをもたらすものです。国際的な激しい論争の的である大麻は、医療大麻を受け入れる政策や社会に関する大きな発展とともに、医学界でますます受け入れられるようになっています。大麻を医療目的で使用することがアーユルヴェーダやアタルバヴェーダに深く根付いていたインドでは、大麻の多様な医薬的可能性について合意が成されるべき時期に来ています。BWビジネスワールドが、ボンベイのヘンプ企業BOHECOの科学顧問で世界的な大麻専門家であるアルノ・ハゼカンプ博士とBOHECOの研究開発部長アブニシュ・パンジャ、BOHECOの副科学者サイダント・ミストリーを招いたインタビューで、医療大麻のさまざまな側面、インドの医療の歴史における大麻の使用、その薬効やインドにおける政策転換について議論しました。

インドの医学史において大麻の医学的使用はどれほど深く受け入れられていますか?なぜ医療大麻は現代のインド社会において敬遠されているのでしょうか?

考古学的発見や出展によると、大麻草は太古の昔からインドで使用されてきました。昔は医療目的だけでなく、文化的、宗教的、霊的な理由で使用されていました。さらにヘンプシードは一般的な栄養価の高い食べ物でした。端的に言って、大麻はさまざまなグループの人々にとって数多くの役割を果たしていました。 インドだけでなく世界的に医学的使用が大きく敬遠されるようになったのは20世紀に入ってからのことです。その理由は、大麻に医療用途だけでなく、麻薬としての使用法もあったからでした。

交配と選別の結果、大麻草がより強力となる一方で、オピオイド薬やその他最新薬の発達から大麻草の医療用途は廃れ、実質的な必要性がなくなりました。1961年にはインドを含めて世界的に大麻が禁止されました。最近は、オピオイド薬は以前考えられていたより危険であることがよりはっきりしてきましたが、逆に大麻は医学的に有益であることがより分かってきました。今、大麻の医学的使用は諸外国でますます受け入れられてきています。インドもそれに遅れを取らず、その真の薬草を取り戻すでしょう。

証明された大麻の医学的用途について簡単に教えてください。疼痛治療におけるカンナビノイドの医学的特性とオピオイドの医学的特性の違いは何ですか?

薬効の「証明」に関する問題は、そのような主張はランダム化二重盲検プラセボ対照臨床試験という現代的臨床研究における究極の判断基準に基づいていなければならないということです。過去数十年にわたり、このような臨床試験は、費用の高さ(大麻草を自分のものにする特許を取ることができないのに誰がそんな高額の費用を払うのでしょうか?)や大半の国には医薬品グレードの大麻がないという事実から、実施することが困難でした。臨床試験不足は大麻に効果がないという事実を反映しているのではなく、臨床試験の企画・実施が困難であることを反映しているのです。それでもなお世界中でますます多くの研究が行われるようになり、最近のメタ分析に基づいて主な大麻成分THCとCBDの効果が多く証明されています。

大麻またはカンナビノイドが有効であることを示す決定的または実質的証拠があります。

・成人における慢性痛の治療
・化学療法による吐き気・嘔吐治療における制吐薬
・多発性硬化症の痙攣症状の改善(患者報告)

大麻またはカンナビノイドが有効であることを示す中程度の証拠は以下の通りです。

・閉塞型睡眠時無呼吸症候群、線維筋痛症、慢性痛、多発性硬化症に関連する睡眠障害を持つ患者における短期睡眠の改善
・HIV/AIDSに関連する食欲増進および体重減の軽減
・臨床測定式多発性硬化症の痙攣症状の改善
・トゥレット障害の症状改善
・社交不安障害を持つ人の不安症状改善
・心的外傷後ストレス障害の症状改善

THCとCBDには時に重複したり、時に相互作用したりする異なる治療効果があることを覚えていてください。

オピオイドは終末期医療においてだけでなく、さまざまなその他疾患における苦痛の軽減において代表的な薬です。長年にわたり、最も多く開発された鎮痛剤はオピオイド薬です。アヘンは主に西洋で、後には東洋でも有効な鎮痛剤として使用されてきました、

1.疼痛スコアの抑制
2.睡眠誘発
3.鎮痛

オピオイドは鎮痛剤の要件を満たしますが、治療中または治療後の欠点・副作用は以下のようなマイナス影響の可能性を持ちます。

1.オピオイド過剰摂取死
2.オピオイド鎮痛剤過剰摂取死
3.便秘
4.身体的依存

最も一般的なオピオイド系の副作用は便秘と吐き気です。

現在、オピオイド薬とその派生薬は、オピオイド系鎮痛剤の過剰摂取によって毎日91人のアメリカ人に死をもたらしています。したがって、カンナビノイド対オピオイドの戦いにおいてはカンナビノイドの方がより高用量でも安全であり、またカンナビノイドの投与は非常に中毒性の高いオピオイド系と比較して死を引き起こさないと結論づけることができます。

大麻の嗜好使用と医療使用はどのように分けることができるでしょうか?インドにおける大麻の汚名を晴らすためにどんなことができるでしょうか?

医療大麻を導入した国では、以下の側面に対処することで医療市場と嗜好市場を分けています。

1.医療大麻製品は正式な許可を受けた団体のみが製造・取扱を行う(栽培、収穫、包装、研究、流通)。認定業者は適切な簿記および警備を行わなければならない。

2.これらの製品は処方箋がある場合のみ、重症で十分に裏付けられた疾患を持つ患者に対してのみ入手可能です。

3.薬としての大麻は従来の医薬品を試したが、十分な治療効果が得られなかった時に提供される。

4.医学的使用は必ず医師または薬剤師の監督のもとで行われる。

5.医療大麻の費用は闇市場における価格とあまり変わらない。医療大麻が安すぎると闇市場で転売される可能性があり、高すぎると患者が闇市場でより安価な製品を求める可能性があるからである。

6.医療大麻の品質は管理される。すなわち汚染物質が含まれず、カンナビノイドの内容量は一貫している。

インドやその他の国における汚名を晴らすために最初にできることは、まず非常に重い病気の患者や苦痛緩和治療を受ける患者に大麻を提供することです。一度に大きな集団に対して大麻を導入するよりも、極めて重症な患者に対して大麻薬品を提供する方がずっと受け入れやすいです。長年にわたる禁止の後では、どの社会も大麻薬になれることが必要です。大麻を恐れる人に大麻を見直し、本当に苦しみを緩和するのか確認する時間を与えてください。

アーユルヴェーダ科学研究中央委員会(CCRAS)および伝統知電子図書館(TKDL)では、大麻の薬理学的特性はどのように述べられていますか?

インドのTKDLによると、大麻はアーユルヴェーダやユナニ医学、シッダ医学において1000年以上前から使用されてきました。例えばバング(大麻)やその調合薬は1000年前以上前から使用されていました。TKDIにおける大麻の用途は主に鎮痛、麻酔特性、消散剤でした。また最もよく知られている大麻の特性は食欲増進です。TKDIには、大麻はハーブ薬であり、長年インドにおいて医療目的で使用されてきた数多くの調合薬の一部として存在しています。

CCRASの範囲では、大麻は強力な鎮痛剤、制吐薬、食欲増進剤、睡眠誘発剤としての効果を示し、生殖能力を改善し、消化器官を強化すると述べられています。また利尿剤であり、月経困難症、咳、結核にも役立つと記載されています。

—大麻のように太古から使用されてきた薬をどのようにインドの医療事情において現代化できますか?これまでのところはどのような進化を遂げてきましたか?

伝統医学と現代医学の違いは主に、リスクと利益に関する理解、そして保証された製品の品質にあります。主な側面は以下の通りです。

・現代の医療大麻は標準化されるべき(例えばTHCとCBD内容量など化学構成が常に同じ)であり、また汚染物質(農薬、重金属、真菌、細菌、その他毒性化合物)が含まれていないべきである。

・リスク(副作用)対利益(治療効果)は適切に構成された臨床試験において研究されるべきである。特に高齢者、子供または免疫力がない患者など脆弱な患者グループに対して研究されるべきである。大麻製品の使用は緩和ケアにとってはこれよりも簡単であるべきだ。

大麻系医薬品はいつ頃インドに登場するでしょうか?

インドには充実した製薬業界や世界レベルの研究施設があります。これらの人々はインドの大麻をインドおよび世界の市場向けの医薬品に転換させる準備ができています。これらの製品開発が本格的に支援されれば(適切な資金援助、容易な認可、研究施設の関心)、最初の製品は1、2年のうちに入手可能となるでしょう。国際的な市場で役割を果たすためには、ISOやGMP、FDAといった品質基準を考慮しなければなりません。それには大規模な臨床試験を実施する必要があるため、時間がかかる可能性があります。その場合はおそらく3〜5年かかるでしょう。CBDオイルなど一部の製品は大規模な臨床検査をせず、栄養補助食品として販売される可能性があります。

大麻の非麻薬成分/カンナビノイドであるCBDと麻薬成分/カンナビノイドであるTHCの医学的応用の違いは何でしょうか?これらのカンナビノイドを医療目的で別々に抽出することはできますか?

THCもCBDも大麻草に含まれるカンナビノイドです。とはいえ、通常は同じ植物に一緒に含まれていません。むしろTHCは大麻タイプのカンナビスに、CBDはヘンプ・タイプのカンナビスに含まれています。他にも大麻草にはCBDやTHCVといった数多くのカンナビノイドが存在します。現代の大麻研究者の任務の一つは、例えばヒマラヤ山脈などにあるような独自のカンナビノイド内容物を持つことなる大麻品種を発見することです。

カンナビノイドは大麻品種から個別に分離し、どんな組み合わせでも混合することができます。CBDは使用者の精神を活性化させない非向精神性カンナビノイドなので、より簡単に医療に使用できます。CBDは神経系に影響を及ぼす疾患(てんかん、不安障害、ストレス、アルツハイマー病など)に対して極めて優れているようです。THCは向精神性があり、精神を活性化させることで有名です。とはいえ、THCにも強力な鎮痛特性があり、多発性硬化症や化学療法の症状に対処することができます。カンナビノイドには数多くの組み合わせの可能性があるので、まだどのカンナビノイドが特定の疾患の治療に最適であるか述べることはできません。

大麻の全草(よりホリスティックな。全ての化合物がある状態)だけでなく抽出物(一部の化合物のみがある状態)、または個々のカンナビノイドに関して研究を実施することができます。

現在のインドにおける政策シナリオ/環境は大麻の医学的使用の受け入れに関してどれほど貢献していますか?他国の医療大麻政策からどんなことが学べるでしょうか?

世界的に見ると現時点で大麻は多くの国にとって未知の領域ですが、大麻系医薬品を主流医学または代替医療に導入するための非常にうまく整備された規制の枠組みを持つ国々もあります。これらの国は、慢性痛、てんかん、多発性硬化症の症状コントロールや化学療法による吐き気・嘔吐などの分野で大麻系医薬品を深刻に必要とする患者に対するアクセス方式を作成しました。例えばオランダでは、厚生省内に医療大麻局と呼ばれる監督機関があり、大麻製品およびその国内における利用、輸出入に関する全てのことに対処しています。そのほかの国にも、医療大麻の生産、品質管理、流通を監督する同様の規制機関があります。イタリア、ドイツ、オーストラリア、カナダなどがそうです。

大麻は1000年以上前からインドの歴史に関わってきました。インド政府が、慢性痛などの疾患やインドでも増えつつあるがんなどのその他慢性的な消耗性疾患の症状官吏に対する医療大麻の使用に関して適正な枠組みを作成できれば、多くの病人を助けることができるでしょう。大麻はこれらの領域で有望な結果を示しているだけでなく、伝統医学でも使用されてきたという事実がありますから、再び現代医学として再導入されるべきです。

これまでのところ、オピオイドが数多くの重病において選ばれる主な薬となっていますが、オピオイドは急速にその魅力を失いつつあります。例えばアメリカでは、オピオイド系処方薬の過剰摂取によって毎日91人が亡くなっています。インドがこの状況から学び、オピオイドより無害だが非常に有効な大麻系医薬品を施行することができれば、インドは収益を上げるだけでなく、新たな研究動向や適応する新たな産業を持つことができるでしょう。うまく対処できれば、大麻の原産地はヒマラヤ山脈の麓であることからもインドはこの分野における世界的リーダーとなれるかもしれません。インド伝統医学における最も聖なる植物の失われた栄光を取り戻す時がきたのです。

近年、世界的に大麻が注目されているため、大麻系医薬品に対する環境は改善されてきました。実際、2015年にインドは、現代的分析的アプローチを持つ植物系医薬品に焦点を当てた植物製剤法を立ち上げました。2016年にBOHECOは、インド居住環境センターでI-CARE(インド大麻分析および研究)サミットと呼ばれる大麻の薬効に特化した会議を主宰しました。最も重要なゲストはDCGI(インド薬物規制司令官)でした。DCGIはI-CAREでのスピーチで次のように述べました。

「その通り、我々は制限的なアプローチより寛大なアプローチを取りたいと考えています。あなた方が塾考・協力し、この国の人々を科学的に守ることを証明できれば、我々は規制機関および技術系官僚として協力します。我々はすでに新製品開発のための植物性医薬品の道は切り開きました。このプラットフォームを利用することができます。患者の治療におけるこの類の代替医療に大きな可能性を感じます」—インド薬物規制司令官G・N・シング博士

その後、政府によって医療分野で医学的に価値のある大麻草を栽培する最初の医療大麻認可がIIIMに与えられました。つまり、インド政府の中でも医療大麻に関する方針転換があったのです。それは政府が行った措置からも明らかです。

きちんと管理されるようになれば、医療大麻はずっと必要とされていた新薬をもたらし、製薬業界を促進し、新たな収益を上げることができます。医療大麻を導入した国々は、大麻の嗜好使用または乱用が増加していないことに気づいています。代わりに、一般大衆が大麻の医療用途に関する議論から多くを学び、嗜好用大麻ですらそれほど問題視されなくなっています。

伝統的なヴェーダの他に、フリデイ・サール・スートラといった書典には大麻について何か書かれていますか?

インドにおける最も古い大麻に関する言及は紀元前1500年頃のアタルバヴェーダにあります(ルッソ、2005年;グリアソン、1894年)。この古書は、バングと呼ばれる大麻は5つある聖なる植物の一つであり、幸福の源、喜びを与えるもの、自由をもたらすものであると称賛しています(IDHC、1894年)。「ソーマに加えられる5つの植物王国について教えよう。それはクサ草、バング(大麻)、大麦、ハーブのサーハ。これらは我々を不安から解放する」

紀元前500年頃のススルタ大医典には、大麻は痰、鼻風邪、下痢によいと勧められています。ススルタ大医典はインドにおいて最も重要な古代医学書であり、伝統医学に関する基礎的な書物の一つです。アビダンマ・クダマーニとしても知られるラジャニガントゥーは、1300年頃にカシミールに住んでいたイシュバルスーリの息子、ナラハリ・パンディタが記した有名な薬剤書です。原稿には、さまざまな重要な薬草の一つとして大麻が挙げられています。そこには次のように書かれています。「大麻の人に対する効果は、刺激剤、加熱剤、収斂剤として記載される。大麻は痰を破壊し、鼓腸を解消し、便秘症を誘発し、記憶を研ぎ澄ませ、食欲を刺激する」

参考:BusinessWorld