ヘンプに含まれる成分を知る:テルペンとカンナビノイド

ヘンプの花、葉、茎、種子には500以上のもの化合物が含まれている。最も多いのは、香り成分でエッセンシャルオイル(精油)となるテルペノイドで120種類以上ある。その多くは、揮発性物質であり、主にモノテルペン(炭素数10)、セキステルペン(炭素数159であり、水蒸気蒸留によって分離することができる。ヘンプに多く含まれているテルペノイドは、品種や収穫時期によって種類と量が違うが代表的なものに、ミルセン、α-ピネン、β-カリオフィレン、リモネン、シス-オシメン、テルピノレン、フムレン、カリオフィレンオキシドなどがある。世界中から集めた162品種の精油成分を分析した結果、1%以上含まれていた18の精油成分で、サティバ系統の平均値である。
これらの揮発性物質は、食品添加物や化粧品に使われ、アロマセラピーによって重要な化合物である。「ケモタイプ精油辞典」によると、モノテルペン系の精油成分には、抗炎症、抗菌、抗ウイルス、副腎皮質ホルモンのコルチゾンが分泌されたときと同じような状態にさせるコルチゾン様作用(抗アレルギー作用)、そして、血液、リンパ液、胆汁などの体液が正常に流れないで滞った状態を取り除くうつ滞除去作用に加えて肝臓強壮、腎臓刺激の作用があり、β-カリオフィレンおよびα-ピネンには疲労回復、体力増強に役立つ強壮作用がある。他にも、免疫調整作用のあるカリオフィレンオキシド、鎮痛作用のあるリナロール、α-ベルガモテン、β-ファルネセンを含有している。最近の研究で、カンナビノイド受容体CB2に結合するのはカンナビノイドだけではく、テルペノイドのβ-カリオフィレンも結合し、痛み、炎症、アテローム性動脈硬化症、骨粗しょう症の治療に役立つことで注目を浴びている。ヘンプに服される多種多様な他の成分とともにさまざまな機能性があると考えられ、それらの全貌はまだまだ未解明なところが多い。

植物カンナビノイドの作用

ヘンプに含まれている植物性カンナビノイドが生体内に貼ることによって、もともとあった内因性カンナビノイドと同じようにエンドカンナビノイドシステムが働くのである。植物性カンナビノイドは、各細胞上にあるCB1やCB2などの様々な受容体に、酵素、輸送対(トランスポーター),イオンチャンネル、核内受容体と多岐にわたって作用する。これらは、おおよそ今日の医薬品開発ターゲットとなるものばかりである。
104種類ある植物性カンナビノイドと受容体などと作用機序は、すべて明らかになったわけではないが、主要なカンナビノイドについては、Δ-9THC、Δ-8THC、CBN、Δ-9THCV、CBC、CBD、CBDV、CBDA、CBG、CBGA、THCA、THCVAなどがある。Δ-9THCは、受容体CB1とCB2ともに部分作動薬であり、他にも第三のカンナビノイド受容体と呼ばれているGPR55とTRPチャネルにも働く。古くなった大麻草樹脂に多く含まれているCBNはΔ-9THCから変換されたものであり、その作用はもとのTHCと同じように受容体CB1とCB2を活性させる。
植物性カンナビノイドの生合成においてCBGA系統ではなく、もう一方のCBGVA系統から生成されるΔ-9THCVは、受容体CB1とCB2を活性させることがわかっている。カンナビノイドではなく、ヘンプの精油に比較的多く含まれるテルペノイドであるβ-カリオフィレンは、受容体CB2を活性化する。受容体CB1をブロックする働きがあるのは、CBDとCBGである。主要なカンナビノイドは、すべてTRPチャネルに作用する。TRPチャネルとは、生体内で温度感覚、痛覚、味覚など様々な感覚受容にかかわる膜貫通タンパク質のチャネル型受容体のことで細部内外の環境変化に対してセンサーのような働きをもつ。TRPチャネルには様々なタイプがあり、多くのカンナビノイドは、唐辛子成分であるカプサイシンに反応するバニロイド受容体(TRPV1)を活性化し、ミントの冷涼を感じるメントール受容体(TRPM8)をブロックする。しかも、植物性カンナビノイドの濃度(1μM〈マイクロモル〉以下、1~10μM、10μM以上)によって効果が異なることが明らかになりつつある。
CBDは、主要なカンナビノイドの中でももっと多くの作用機序がある。CBDはΔ-9THCとは反対の働きで、精神作用をもたらすCB1をブロックし、GPR55もブロックする。うつ病や睡眠を調整するセロトニン受容体に作用し、バニロイド受容体、コーヒーのカフェインに作用するアデノシン受容体に作用する。また、核内受容体であるPPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ)にも作用し、この受容体は、抗糖尿、抗動脈硬化、抗腫瘍、抗炎症の作用が注目されてい。CBDは、受容体だけではなく、内因性カンナビノイドを分解する酵素であるFAAH(脂肪酸アミド加水分解酵素)とMGL(モノアシルグリセロールリパーゼ)の働きを阻害する作用があり、これによって、細胞周辺の内因性カンナビノイドの濃度を高めることにより、様々な機能を発揮すると考えられている。

出典 : カンナビノイドの科学