日本と世界の姿勢を比較:国際条約は医療大麻を禁止していない?

日本では医療大麻は大麻取締法第四条によって、厳しく規制されている。
この第四条によって、施術する医師も使用される患者も罰せられる厳しい法律が存在する。それに加えて、大麻草や天然カンナビノイドを使用した研究や臨床実験も行うこともできない。

2015年8月と2016年3月、参議院荒井議員は国会において、

『アメリカ、欧州では大麻の研究がなされ、極めて様々な病気に効くということがわかってきている。しかし、わが国では臨床研究すらできない。医療という観点からどのようにお考えですか』

という主旨の質問をしたのである。

それに対する厚生労働省審議会の答弁は次のようなものであった。

『大麻はわが国を含め世界の多くの国で乱用されている薬物のひとつで、国際条約や各国の法律により規制されている』

と述べたのである。

厚生労の言う国際条約は1961年の『麻薬に関する単一条約』などを指している。

しかし、同条約は第二条の5項で、『医療上および学術上の研究(締約国の直接の監督および管理の下にまたはこれに従って行われる臨床実験を含む)にのみ必要なこれらの薬品の数量については、この限りではない』としており、医療と学術上の研究については禁止から除外されている。

また、薬物関連条約の遵守を監視する国連の組織である『国際麻薬統制委員会(INCB)』は、2004年の年次報告で、『1990年代末以降、カナダ、ドイツ、オランダ、スイス、イギリス、アメリカなど、複数の国で大麻または大麻抽出物の医療的な有効性に関する科学的調査が進められている』と報告し、さらに2009年年次報告では、『医療及び科学研究目的で使用する大麻』として、数年間にわたり、大麻または大麻抽出物の医療的な有効性に関する科学的研究が複数の国で行われたきた。

国際麻薬統制委員会は、これまでの報告書に記載されているとおり、大麻および大麻抽出物の医療的な有効性に関する健全な科学的研究が実施されることを歓迎し、その研究結果を利用できる場合は、それらを国際麻薬統制委員会、WTO及び国際社会と共有するようすべての関係する政府に求めていると報告している。

これらの報告からわかるように、国際条約の遵守を監視するINCBは、1961年の単一条約が医療と科学研究を禁止しているとはしておらず、逆に、各国における医療大麻を歓迎し、その報告を求めているのだ。

『世界保健機関(WHO)』も、1997年の『大麻:健康上の観点と研究課題』で次のように報告している。

カンナビノイドの治療への適用の可能性は広範囲にわたるが、これは脳と身体の他の部分でカンナビノイド受容体が広範に分布していることを反映している。カンナビノイド受容体にまったく異なるサブタイプが存在することによって、アゴニストまたはブロッカーのいずれであっても、これらの受容体への選択的な結合を可能とする新しい化合物の今後の開発によって、選択的な治療法が多くの病気に導入されるものを思われる。

カンナビノイドがほかの治療にも使用されることから、その有効性についてさらなる基本的な薬理学的、及び、実験的な調査と臨床的な研究を行うべきことが推奨されている。

カンナビノイドの他の治療用途は制御された研究で示されており、喘息と緑内障の治療、抗うつ剤、食欲増進薬、抗けいれん薬としての用途を含んでおり、この分野の研究は続けるべきである。

つまり、WHOの報告の中で『治療への適用の可能性は広範囲にわたる』、『人体にはカンナビノイド受容体が広範囲に分布している』、『今後の開発によって、治療法が多くの病気に導入されるものと思われる』との見解を示しているのだ。

厚労省はこれまで医療大麻を例外なしに禁止してきたが、1961年の単一条約も、1997年WHO『大麻:健康上の観点と研究課題』も、2009年のINCB報告も、医療使用、臨床研究を禁止していないばかりか、研究成果を国際社会が共有することを推奨しているのである。

このように国際条約では、大麻の医療使用や研究に対しては一度も禁止したことはなく、カンナビノイドなどの科学的な解明がなされつつある現代では、むしろ奨励されているのである。

出典:医療大麻入門