CBDオイル:精神作用のない医療大麻の新しいカタチ

ジャクソン・レイデン君はいつも健康な子供でした。テコンドーを習い、ラクロスと野球もやっていました。しかし2011年の8歳の誕生日を数ヶ月過ぎた頃、一日に数回の発作を起こすようになりました。多くは30秒ほどの短いものでしたが、中には倒れて怪我をしてしまうような重い発作もありました。その後の2年間、ジャクソン君は50回ほど病院に担ぎ込まれ、4年生と5年生の多くの授業を逃してしまいました。

ジャクソン君の両親は全国で20人以上の医者にジャクソン君を診せ、ジャクソン君は12種類以上の薬を試しました。どれも効きませんでした。2年前、レイデン家にもうなす術はありませんでした。そこで大麻が助けになるか試すことにしたのです。(レイデン家が住むコロンビア特別区では医療大麻の使用は合法で、一家は医療大麻を勧める医師を見つけたのです)2014年にジャクソン君は初めてヘンプの投与を受けました。

「数日のうちに息子はほとんど発作を起こさなくなったんです」と母親のリサは言います。「ショックでした」その後数ヶ月のうちに、ジャクソン君は他の薬を摂らなくてよくなりました。

医療大麻は効果的だっただけでなく、ジャクソン君に精神作用することもありませんでした。ジャクソン君が摂取する大麻株は普通のものではありません。高濃度のカンナビジオール、つまりCBDを含有しています。CBDは大麻における2つの主な分子のうちの一つで、もう一方はテトラヒドロカンナビノール、つまりTHCです。THCは精神に作用することで有名ですが、CBDは違います。

この10年間、研究者たちはTHCが痛み、吐き気、食欲不振およびその他の問題を治療する可能性あることを発見してきた一方で、CBDは人体において生物学的に不活性であると考えられていました。しかし過去10年間において、科学者たちは、CBDは実はかなり有益であると結論付けたのです。多数の研究において、CBDがてんかんはもちろん、不安障害、統合失調症、心臓病およびがんを含む幅広いその他疾患を治療できるという証拠が発見されてきました。

現在13歳になったジャクソン君の診断ははっきりしていませんが、毎日ヘンプを摂取し続けています。(多くの患者と同様に、ジャクソン君は液体で摂取しています。その方がより正確な量を投与でき、肺の問題を回避できるのです)ジャクソン君は今でも発作を起こしますが、起こっても以前ほど重くなく、また1週間に1度か2度程度で、ヘンプを利用し始める前の月に200回と比べて減りました。ジャクソン君は終日学校に通えるようになり、また家族とサイクリングやハイキングに行けるほど元気になりました。

アメリカ中で数千人の人々が高濃度CBD製品を使用

「CBDは非常に有力な化合物です」ジョージ・ワシントン大学総合医療センターの院長ミカイル・コーガン氏は言います。「CBDがたくさんの患者に効き目を示すのを見てきました」コーガン氏は、てんかん、PTSD、不安障害、自己免疫疾患、自閉症および不眠症などの疾患に対して定期的に高濃度CBDの大麻株を処方しています。

大変革をもたらすもの

大麻草において、CBDとTHCは概して逆相関を持ちます。つまりTHCが多ければ多いほど、CBDは少なく、その逆も然りです。近年、栽培者は高濃度のCBDを含有する株を交配してきました。2つの化合物は相乗的に作用し、また多くの病気においてCBDとTHCの組み合わせは最高だ、という人もいます。

CBDを特に魅力的にするのは、使用者の精神を活性化させない点です。多くの娯楽用大麻使用者は勿論精神活性化を欲していますが、患者の多くはむしろそれを避けたいでしょう。この性質のおかげでCBDは、医療大麻の普及の妨げとなってきた政治的、法的および医学的懸念の多くを回避しています。

CBDの使用を推進する北カリフォルニアのNPO、Project CBDの所長マーティン・リー氏は次のように述べています。「CBDは医療大麻に関して大変革をもたらしてきました。その安全性および精神作用の欠如が、CBDは違法であるべきという議論を弱体化しています。この件に関して全国的議論へと変わってきたのです」

多くの科学者がCBDの可能性を認識するにつれて“研究爆発”が起きてきた、と、ベセスダにあるアメリカ国立衛生研究所の薬理学者で心臓専門医であるパル・パッヒャー氏は指摘します。パッヒャー氏は10年以上に渡りCBDを研究してきました。彼の研究は、CBDが心臓疾患および糖尿病に効果的であることを示しています。

CBD研究の重要な分野の一つはてんかんです。多くの科学者が、特にこれまで他の治療が効かなかった患者の発作を減らすCBDの可能性に注目しています。「我々は、CBDによる非常に有益な効果を発見しました」深刻な小児期てんかんに対するCBDの研究をしている、ニューヨーク大学の神経学者オーリン・デヴィンスキー氏は言います。

デヴィンスキー氏と同僚のダニエル・フリードマン氏はまだ公表されていない発見のある研究において、従来の薬に加えてCBDを投与された患者は、通常の投薬計画を続ける患者よりけいれん発作の回数が39%も少なくなったことを発見しました。これが治療抵抗性のある患者に限った研究であることを考えると、これは「素晴らしい反応です」とデヴィンスキー氏は話します。

CBDが効果的か、またその場合どんな症状においてか、と確立するにはさらなる研究が必要だとデヴィンスキー氏は言いますが、重症患者およびその両親はそのデータが出るまで待てないだろうことも理解しています。「他の薬が効かなかったら、CBDを試すのは確かに合理的です」

CBDは不安障害、うつ病および統合失調症の治療においても有望となってきました。研究の多くはラットおよびマウスにおけるものですが、いくつかの研究では人体への効果を発見しています。例えばドイツの研究者は2012年、統合失調症患者にCBDを投与した際、幻覚や混乱した考えなどの精神病的症状の軽減があったことを示しました。

CBDは抗がんの性質も持っています。サンフランシスコにあるカリフォルニア・パシフィック医療研究機関の研究者ショーン・マカリスター氏およびピエール・デスプレス氏は、CBDががん細胞の転移を防ぐことができるのを発見しています。

CBDがどのように作用するのかははっきりしていません。それはCBDが、 幅広い効果の主要因である複合的生化学的経路を刺激するというのが原因の一つです。CBDは有力な抗炎症および抗酸化の性質を持ち、また神経伝達物質セロトニンとともに、痛みおよび不安を軽減するその他の分子、アナンダミドのレベルを増加させます。

ブラジル、サンパウロ大学の薬理学者フランシスコ・ギマレス氏は、CBDが脳内、特にうつ病および不安障害において重要な役割を果たす部位である海馬において、新しいニューロンの成長を促進させることを発見しました。

「CBDは薬理学者にとってのディズニーランドです」とギマレス氏。「CBDは数多くのメカニズムの可能性を持ち、有用するありとあらゆる使用法があります」

しかしCBDを研究することは簡単ではありません。科学者たちは法令が過度の制約を研究に与えると抗議しています。CBDは使用者の精神を活性化させないにもかかわらず、連邦政府によってスケジュールIの薬物に分類されているのです。それは乱用に関して高い可能性を持ち、医療使用は認められないことを意味します。

スケジュールIリストには大麻(株で区別されていない)およびヘロインが含まれます。(連邦政府が大麻研究を監視する一方で、大麻使用は州法によってある程度規制されています)結果的に、CBDを研究する科学者は多くの制限規則を守らなければなりません。昨年、麻薬取締局は、何人かの州知事による大麻の指定の変更要求を受けて、すべての大麻はスケジュールIに属し続けることを発表しました。

いまだにスケジュールI

「ばかげているし、独裁的だ」デヴィンスキー氏は、てんかんの治験に関する政府の承認を得るのに何時間も余計な労力を必要とした、と話します。CBDを研究するその他多くの科学者と同様に、デヴィンスキー氏はほぼ純粋なCBDを使用します。全く精神作用がないにもかかわらず、警報装置付きの重い金庫に保管しなければなりません。

研究が続行中であっても、数千人の人々がCBDを薬として使用しています。イギリスの製薬会社GWファーマ社は、2種類のCBD薬品を開発しました。1対1の割合でCBDとTHCを含有するサティベックス、および純粋なCBDであるエピディオレックスです。サティベックスは多発性硬化症に見られる苦痛を伴う筋けいれんに対して処方され、エピディオレックスは小児期てんかんに向けた薬です。サティベックスはアメリカでは購入できませんが、カナダ、イングランドおよびイスラエルを含む29ヶ国で認可されています。

エピディオレックスはまだどの国でも販売許可が下りていません。GWファーマ社は来年、食品医薬品局の承認審査方式を開始することを見込んでいると話しています。

数千人のアメリカ人が、強力なCBD容量を持つ大麻株を使用しています。CBDに関する関心が伸びるにつれ、需要も増えている、と支持者および医療大麻薬局は同意します。

ワシントン週北西部で医療大麻薬局タコマ・ウェルネス・センターを運営するステファニーとジェフリー・カーン夫妻は、1200人の患者のうちおよそ半数はCBDが豊富な製品を使用していると言います。薬局では高濃度CBD大麻を数株とCBDオイルを提供しています。CBDオイルは、特定の症状に対して勧めるさまざまなCBDとTHCの割合を 揃えています。「毎日たくさんの質問を受けます」とステファニーは言います。「多くの患者さんがこの製品によって緩和を感じていますし、多くの場合調号薬よりも効くのです」

保険がない

治療費はさまざまです。大麻薬局や投与量によって、月100ドルから月1000ドル以上まで変動し得るのです。保険適用ではない費用にかかわらず、CBD薬は重い難治性のてんかんを持つ子供から大きな関心を引いています。最初に医療大麻を合法化したカリフォルニア州およびコロラド州は、そのような患者に人気の場所となりました。他の州がCBDの医療使用を合法化する前に、CBDへのアクセスを求めていくつかの家族はこれらの州に移住しました。

この分野における最も熟練した医師の一人、ロサンゼルスの開業医ボニー・ゴールドスタインは、難治性てんかんを持つ数多くの子供たちを治療するためにCBDを使用してきました。これらの患者の半数において、発作回数が大幅に減少した、とゴールドスタイン氏は話します。「適切な患者に対して正しく使用すれば、CBDは非常に有力です」

それにもかかわらず、CBDの力を信じる人でさえ、CBD薬はいまだに十分研究されていないと認識しています。治療はシステム化されておらず、多くの製品は規格化または検査済みでなく、また患者(またはその両親)は一般的に自分たちで投薬方法を解明する他ないからです。一部の供給者および大麻薬局は取り扱う製品のCBDとTHCのレベルを検査しますが、多くは検査していません。「我々はもっと多くの研究をする必要があり、より多くの証拠が必要です」とコーガン氏は言います。「そして科学的に行われなければなりません」

ジャクソン君の母、リサ・レイデンにとってこの問題は、CBDの莫大な可能性を否定するものではありません。「完璧ではないことは分かっています。私たちは間違いなくもっと知る必要があります。でもそうしているうちにも、多くの人々が助けを必要としています。これらの人々は不健康で、CBDが効くのです」

出典 : washingtonpost