調査で分かった!これほど多くの癌患者が大麻を使用する理由

がん患者はさまざまな症状を緩和するために大麻を使用しています。しかし、医療大麻が合法の州ですら、患者は必要な情報を十分に得られていません。

少なくとも大麻が合法化されたワシントン州では、がん患者のうち約25%が大麻を使用しています。ワシントン州は1998年に医療大麻を、2012年に娯楽用大麻を合法化しました。2014年から大麻は市販されています。半数以上の州で医療大麻が合法化されるなか、研究者はどれほど多くのがん患者が大麻を利用しているか調べようとしています。

癌患者の大麻使用に関する調査を実施

フレッド・ハッチンソンがん研究センターのスティーブン・パーガム博士ら研究者は、シアトルがんセンター・アライアンスの患者を調査しました。2737名の対象患者のうち926名が無記名アンケートに回答しました。研究著者は、回答数が少なかったことからサンプリング・バイアスが生じる可能性を認識していました。現在の利用パターンを過多とも過少ともすることは不可能だと述べています。

回答者の平均年齢は58歳でした。そのうち約66%が過去に大麻を使用したことがあると回答しました。約24%は過去1年間に使用しており、21%は過去1ヶ月間に使用したことがあると答えました。回答は、無作為の尿サンプルによって確認されました。完全な研究結果はジャーナル・キャンサー誌に掲載されています。

医療大麻使用率の増加

ジュネラ・チン博士は整骨医であり、統合的大麻医師でもあります。チン博士は医療大麻が合法のカリフォルニア州とニューヨーク州で開業しています。

「医療大麻が合法化された州ではますます利用が増加しています。私はカリフォルニア州における増加を10年間にわたってみてきました。今はそれをニューヨーク州で目撃しています」

ニューヨーク州医療大麻プログラムに登録する患者数は急増しているとチン博士は言います。

「私の診察が他と違うのは、医療大麻鑑定を行う限られた数の医師のなかでも少ない、総合的な医療業務を行なっている点です。私は、科学論文を読み、他の専門医や海外の科学者らの体験や、15年以上の治療経験から学びながら、自らの標準を開発してきました」

がん患者は大麻を選ぶ理由

調査に参加した患者の大半が、身体的および精神的症状のために大麻を使用したと答えました。その理由には、疼痛、吐き気、腹痛、ストレスなどが含まれました。また楽しみのために使用すると報告した人も一部いました。がん患者は他に選択肢がなくなることがある、とチン博士は言います。がんの症状や副作用と闘うためにがん患者はありとあらゆる薬剤を投与されます。

「そしてそれらの薬が効かなかった、または体に負担をかけ過ぎているとき、がん患者は合法性に関わらず選択肢として大麻のことを調べるのです」

チン博士によると、大麻は食欲を増進し、睡眠を助け、痛みを緩和し、気分を改善する唯一の制嘔吐剤です。研究著者らは、症状管理における大麻の役割を評価するための臨床試験の必要性を指摘しています。

39歳のマリーン・ヤニキアン-サットンは2016年に結腸がんと診断されました。現在寛解期にあるマリーンは、化学療法を受けた際に大麻を使用したと言います。

「大麻は精神的・肉体的な痛みを緩和してくれました。大麻が無ければ私は痛みに耐えられなかったでしょう」

彼女が住む州では医療大麻は合法ですが、合法性が決め手だったわけではない、と言います。

「決め手だったのは、化学療法薬が大麻よりも有毒で生命に関わるものだと気づいたことです。私はさらに薬を増やすより、大麻でナチュラルに化学療法の副作用を緩和することを選びました」

マリーンは簡単には決断しませんでした。

「私は大麻を購入するのに必要な許可証を入手する前にリサーチをし、担当医に相談して、どの大麻株がどの症状の緩和に使用できるかに関して的確なアドバイスを受けました。カリフォルニア州にはがん患者に大麻を無料で提供する機関があり、私もその患者の一人でした」

大麻を使用すると調査に回答した患者の約70%が、大麻の吸引または大麻入り食品の摂取をしたと報告しています。また約89%がどちらの方法も利用していました。患者はチンキ剤(舌下)、カプセル、ベイプ(蒸気の吸引)などを利用している、とチン博士は言います。

「使用方法の選択は、好みや大麻を利用する理由によります。例えば、ベイプは吐き気の抑制に優れています。数分以内に吐き気を抑えてくれます。痛みまたは睡眠に対する効果を得たいとき、より長く続く効果を求めるときは、舌下投与を選ぶこともあります。しかし効果の効き始めまでは30分から1時間かかるでしょう」

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使用上の注意

全ての大麻が同じというわけではありません。大麻薬品は多種多様です。大麻株の名前が誤解を招くこともあります。

「新しい州法によって、使用者が大麻または製品の生化学化合物を得ることができるシステムができることが望まれます」

またチン博士は、大麻が合法化されていない州に住むがん患者に関しては次のように述べました。

「大麻が患者の手に渡るまで多くの人を経由するので、無法状態の大麻を入手することについて警告します。免疫力がない状態ならば、真菌や農薬などで汚染された大麻を使用するリスクを負うべきではありません」

合法でも情報は不十分

合法化は大麻を利用する決断において重要な要因だったことが研究で分かりました。大麻が合法化された州のがん患者は、広範のサブグループの中で活発な利用率が高かった、と結論づけられています。また、がん患者は担当のがん専門医から大麻に関する情報を得たがっていることが指摘されました。しかし、それは実現していません。パーガム博士はプレスリリースの中で次のように述べました。

「この研究によって、がん患者における大麻のリスクと利点を評価することを目的としたさらなる研究に門戸が開かれることを願っています。これは重要なことです。なぜなら私たちが大麻に関して患者を教育しなければ、患者は今後も他の場所から情報を得るからです」

チン博士はこの意見に同意します。

「多くの医師がエンドカンナビノイドシステムについて教育を受けていません。私は医学部で学び、1996年に医療大麻を合法化したカリフォルニア州で研修医となったにも関わらず、エンドカンナビノイドシステムについて知りませんでした」

「大麻を勧めたり、大麻を利用する患者を診察したりするのを躊躇する医師たちは、患者を私の元に送ってきます」

食品の成分表示のように大麻薬品の化学構成を詳細なラベルで表記してほしい、とチン博士は考えています。

「問題なのは、この業界がまだ秘密主義だということです。医療大麻を合法化し、規則を設置した州は、大麻薬品について積極的に患者を教育するべきです。そうすれば患者も医療大麻の供給源や品質を理解することができ、また、生命に関わる疾患の治療に大麻がどのように役立つか医師と協力することができるようになるでしょう」

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アメリカでは、医療大麻が合法の州で多くのがん患者が大麻を利用しているようです。この記事にあるように、ワシントン州ではがん患者の約1/4が大麻を利用していると言いますから、かなりの割合ですよね。
がん患者が大麻を選ぶのには理由がある

1. 吐き気の抑制・食欲増進

がんの化学療法では副作用として吐き気や嘔吐の症状が出ることが有名です。このために食欲もなくなり、体重が大きく減ることが多いです。体重が減ると体力が落ち、病気と闘う力も弱くなってしまうので、これは非常に懸念される副作用なのです。
大麻には優れた制吐作用がある上、食欲増進効果もあります。この作用を利用してマリノールなどの合成THC薬が認可されているように、その効果は医学的にも認められているのです。

2. 鎮痛

がんにはがん特有の耐えがたい痛みが症状として表れます。大麻には強力な鎮痛効果があり、がん患者の苦しみを緩和することができます。通常、強度の痛みを感じているがん患者にはオピオイド系鎮痛剤を処方されることが多いですが、オピオイドは依存性が高く、意識が朦朧とするなどの不快な副作用があります。その点、大麻は中毒性が低く、副作用も眠気や口の渇きなど軽度のものがほとんどなので、オピオイドよりも安全に使用することができます。

3. 抗腫瘍作用

大麻や大麻の成分カンナビジオール(CBD)には、がん細胞の自然死を促すことでがん細胞の増殖を抑制する作用があると言われており、現在研究が進められています。これまで実験動物を用いた前臨床試験ではその作用を示す結果が出ていますが、人間に対する臨床試験はまだ初期段階なので、今後の研究が期待されます。

4. 不安を抑える

がんと診断される、がんの治療を受ける、というのはショックや不安が大きい体験です。そのショックからうつ病を併発してしまう患者も少なくありません。大麻やCBDには抗不安作用があるので、闘病に関する不安を緩和してくれる効果もあります。

医療大麻ががん患者に選ばれる主な理由を4つ挙げました。こういった効果があるにもかかわらず、日本で大麻を医療目的で利用できないのは非常に残念だと思います。先日は医療大麻を推進していた政治家が大麻取締法違反で逮捕されるという残念な事件もあり、日本での医療大麻合法化はなかなか進みそうにありません。行政レベルでも民間レベルでも偏見のない議論が行われることが望まれます。