数多くの治療効果を持つと言われているカンナビジオール(CBD)ですが、CBD単体で摂取するのと、全草から抽出された植物エキスとして摂取するのでは得られる効果が大きく異なります。
このページでは、単体CBDによる釣鐘効果、CBDやその他カンナビノイドの効果を増幅するアントラージュ効果について詳しく解説します。
アントラージュとは?
フランス語で取り巻き、側近および周辺環境を意味する単語である。最近の日本でもスポーツなどで用いられることがあるが日本では滅多に聞かない言葉だ。植物エキスのアントラージュ効果(側近効果)とは、植物体の個々のカンナビノイドよりも植物エキス(抽出物)の方が、様々な成分の相互作用によって優れた治療効果が期待できるという意味である。
西洋医学で主流の単一成分の医薬品ではなく、多成分の生薬の方が薬理学的および治療的な優位席があるということだ。ルミール・ハヌスとイスラエルのヘブライ大学の2人の研究者らによると、過去15年間、多くの前臨床研究で単一のCBD成分の抗炎症作用が注目されてきたが、単一のCBDはある量を超えると治療効果が大幅に減少することがわかった。
つまり、単一のCBD成分は、用量反応が釣鐘状になる特徴がある。そこで彼らは、CBDを高濃度に含む植物性エキス(CBD 17.9%、THC1.1%、CBC1.1%、CBG0.2%、微量のCBNとCBDVを含む)と単一のCBD成分を比較する研究を実施した。
すると、ラットに投与して抗炎症作用と鎮痛作用を評価した研究において、過去の研究と同じように、単一のCBDは治療域が狭く、釣鐘状の用量反応曲線となった。一方で、植物エキスでは、用量が増えれば反応が増えるといった明確な相関関係があり、少量の植物エキスで著しい鎮痛作用が得られるのに比べて、単一のCBDで同じ作用を得るには、はるかに多くの量が必要なことがわかった。
このことから、植物エキスは多数のカンナビノイドと他のテルペノイドやフラボノイドなどの化合物の相乗的な相互作用によって、単一のCBDで見られた釣鐘状の用量反応を打開する作用を発揮していると推測された。
CBDが他のカンナビノイドと共存すると、CBDの用量反応が向上するという重要な発見は、CBDの腫瘍細胞に対する抗増殖効果や、膀胱収縮に対する抑制効果を立証した最近の報告に裏付けられている。単一成分より多成分エキスに優位性があることは、すでに科学的に明らかとなっている。この研究は、次のように結論付けている。
これまでの多くの研究において、伝統的に使われている薬草の単一化された成分の特性が明らかにされ、その成分による治療効果の化学的根拠が判明している。
しかし、その過去のデータと、今回の研究データから、これまで医薬品で対応してきた疾病を治療するのに、新世代の植物性製剤を導入するのが正当なことがわかる。植物エキスの使用で見られた治療における相乗作用により、結果的に、比較的少量の活性成分で十分に賄え、副作用も軽減した。
体内にある複数のターゲットに効果を与える
ヒルデベルト・ワーグナーとグートルン・ウルリッヒは、植物エキスの相乗効果を次のようにまとめている。
ワーグナーが単独のTHC1mg/kgと植物エキス5mg/kgで実験したところ、多発性硬化症の鎮痛作用は植物エキスの方が効果的であった。この結果は、THCとCBDを組み合わせて使うアイデアにつながっている。植物エキスは、体内にある多機能なエンド・カンナビノイド・システム(ECS)の働きを助ける。
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活性成分の吸収を改善する
皮膚疾患への局所剤の吸収は、この問題の典型的な例である。アレルギー性皮膚炎に関する実験によると、β-カリオフィレンのようなテルペノイドの助けを借りて、カンナビノイドの吸収を増加させている。
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細菌の防御機構を克服する
アントラージュ効果は、さまざまな細菌感染症を治療するのに有効である。カンナビノイドは抗菌性を持っている。しかし、細菌は時間をかけて抗生物質に対抗するために防御機構を生み出す。いわゆる耐性菌の出現である。これに対抗するには、カンナビノイドだけでなく、非カンナビノイド成分の抗菌性も用いて、異なる経路を介して細菌にアプローチするのが効果的である。
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有害な副作用を最小化する
アントラージュ効果によって、特定のカンナビノイドの副作用を他のカンナビノイド抑えるということである。これに最も当てはまる事例は、患者によってTHCの酩酊効果が現れる場合があるが、このTHCの負の効果をCBDが調整する例である。