米大手製薬会社が難病向けCBD新薬開発でリード

アメリカ大手製薬会社のインシス・セラピューティックス社は、プラダー・ウィリー症候群向けのカンナビジオール(CBD)経口液剤に対して食品医薬品局(FDA)が優先承認審査制度を適用したことを発表しました。

プラダー・ウィリー症候群の症状

プラダー・ウィリー症候群は、子供に生命に関わる肥満や2型糖尿病を引き起こすことがある、制御できない食欲によって特徴付けられます。また中度の知的障害を合併し、内分泌・神経障害や奇形などを伴います。出生15000人に1人の割合で発症しますが、現在、プラダー・ウィリー症候群に関して承認された治療薬はありません。

インシス社のCBD開発経歴

インシス社は、2018年上四半期に臨床開発計画を開始する予定です。第II相研究の第一目的では、プラダー・ウィリー症候群患者における過食症関連行動におけるカンナビジオール経口液剤の有効性ならびに体重におけるその有効性を評価します。

またインシス社は12月、難治性小児欠伸てんかん治療薬として CBD経口液剤の臨床試験第II相を開始しています。この臨床試験は非盲検投与量決定試験で、難治性小児欠伸てんかんにおけるCBD新薬候補の有効性、安全性、耐容性、薬物動態(PK)の評価を目的としています。ここで使用されているのは合成のCBDです。

インシス社はこれまでに難治性小児欠伸てんかんに対するCBD経口液剤の二点臨床試験を完了しており、有望な結果を得ています。第I/2相PKおよび正気安全性研究に参加した患者の大半は、CBD経口液剤の摂取によって発作頻度および重症度の軽減が見られました。これらの初期成果は2017年12月にワシントンDCで開かれた年次アメリカてんかん学会に発表されました。

疾病対策センター(CDC)およびてんかん基金によると、アメリカでてんかんと診断された47万人以上の子供のうち約2〜8%が欠伸発作をしています。

研究に携わっているワシントン州タコマにあるメアリー・ブリッジ小児病院の小児神経科医スティーブン・フィリップス博士は次のように話しています。

「難治性小児欠伸てんかん患者の治療選択肢は限られており、不十分です。患者の生活の質や臨床転帰を改善するためには、より優れた有効性と少ない副作用を併せもつより良い治療法が必要です。CBDは、この難治性てんかんに対して極めて有望で、私たちはインシス社による特に有望なCBD製剤の研究に関われることを嬉しく思います」

インシス・セラピューティックス社薬事規制部の上席副社長スティーブ・シャーマンは次のように述べています。

「我々は難治性小児欠伸てんかんにおけるCBDの臨床開発計画を始められることに興奮しています。CBDは従来の治療が無効だった時、これらの患者に新たな代替薬を提供できる可能性を持つと信じています。この臨床計画は、稀な疾患における満たされていない医療ニーズに取り組むという我々の継続的な尽力を実証し、また医薬品グレードの医療カンナビノイドという新分野におけるパイオニアとして地位を進展させます」

研究は2018年後半に完了する予定です。

インシス社について

インシス・セラピューティックス社は、患者の生活の質を向上させる治療用分子の革新的薬および新薬供給システムを開発・商品化する専門製剤会社です。インシス社は、自社のスプレー技術や医療カンナビノイドの開発能力を用いて、現存の医薬品に関する臨床的欠点および満たされていない医療ニーズに取り組むことを意図した製品のパイプラインを開発しています。インシス社は、オピオイド中毒、オピオイド過剰摂取、てんかん、ならびに満たされていない医療ニーズが大きい疾患分野の潜在的治療薬を開発することに尽力しています。

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CBDなどのカンナビノイドを使った医薬品開発といえば、サティベックスを開発したイギリスのGWファーマシューティカルズ社が有名ですが、今度はアメリカの大手製薬会社が合成CBDを使った治療薬の開発に励んでいるというニュースです。てんかんに対するCBDの有効性はこれまでに多くの研究で実証されてきていますが、プラダー・ウィリー症候群に対する有効性に関しては初めて知りました。まだ臨床開発計画を始める段階なので、実際に効果があるかはまだ分かりませんが、研究結果に期待したいところです。インシス社は昨年10月にCEOが逮捕されるという残念な不祥事がありましたが、これを反省して、今後はCBD医薬品開発に尽力してもらいたいです。

参考:Empr