パーキンソン病の初期症状が出る前に早期発見するための手段を求めて、新たな研究が血中カフェイン濃度に注目しています。
パーキンソン病とは?
パーキンソン病は、手足の震え、バランスと運動感覚の維持の困難、動作緩慢などによって特徴付けられる神経変性疾患です。60歳以上の成人が発症することが多く、症状は時間とともに悪化します。世界で400万人以上がパーキンソン病に罹患しており、国立衛生研究所(NIH)のデータによるとアメリカでは毎年約6万人が新たにパーキンソン病と診断されています。日本での人口1,000人当たりに約一人が罹患していると言われており、日本全体で10万人以上の患者さんがいると推定されています。
これまでの研究では、パーキンソン病の早期診断が健康転帰の改善、症状の減速、神経運動能力の維持をもたらすことが明らかになっています。しかしこれまでは、 後期になるまで最も明白な運動障害に関連する症状が出ないため、早期に診断することが困難でした。
血中カフェイン濃度検査の可能性
現在、東京にある順天堂大学医学部の科学者が、パーキンソン病の早期診断における血中カフェイン濃度検査の可能性を調査しています。
「これまでの研究でカフェインとパーキンソン病発症リスクの低下の関連性が示されていましたが、パーキンソン病患者においてカフェインがどのように代謝されるのかほとんど分かっていませんでした」筆頭著者の斉木臣二博士は説明します。
研究結果は2018年1月3日にニューロロジー誌に発表されました。
血中カフェイン濃度の低さと疾患発症の関係
研究には139人の被験者が参加しました。108人は平均して約6年前にパーキンソン病と診断された人々で、31人はパーキンソン病と診断されていない同年代の人々でした。斉木博士の研究チームは、全被験者の血液検査を行い、カフェインならびにカフェインの代謝産物11種の血中濃度を測定しました。
さらに全被験者は、体内におけるカフェインの処理方法に影響する遺伝子変異がないか確認する検査を受けました。またカフェイン代謝に影響しうる遺伝子突然変異がないかも検査されました。
パーキンソン病患者である被験者も健康な被験者も、1日あたりコーヒー約2杯に相当する平均的な同量のカフェイン量を摂取しました。全被験者が毎日ほぼ同量のコーヒーを飲んだという事実にもかかわらず、パーキンソン病患者の被験者は健康な被験者よりも一貫して血中カフェイン濃度が低かったことが分かりました。
パーキンソン病患者の被験者の平均血中カフェイン濃度は10マイクロリットル当たり24ピコモルで、11種の代謝産物のうち9種が血中に含まれていました。
対照的に健康な被験者における血中カフェイン濃度は、平均して10マイクロリットル当たり79ピコモルでした。また測定した代謝産物のうち1、3、7-トリメチル尿酸の濃度は、パーキンソン病を患う被験者の50%以上に観測された数値 以下でした。
斉木博士チームが行なった統計分析は、1中0.98を記録し、血中カフェイン濃度測定がパーキンソン病の信頼性のある診断方法であることを示しました。1は全事例における正確な診断を表します。
カフェイン代謝に関する遺伝子突然変異の影響を検査した際は、パーキンソン病の有る無しにかかわらず被験者に違いは見られなかったことが分かりました。
カナダ、トロント大学のデヴィッド・G・ムノス博士が論文に付随する論説で強調するもう一つの重要な研究結果は、より重症なパーキンソン病患者において血中カフェイン濃度が著しく低くなかったことです。
ムノス博士によると、この事実はパーキンソン病の初期の方がこの違いがより顕著である可能性を示唆しています。
早期診断のための簡単な検査となる可能性
とはいえ、この新研究にもある程度の限度があります。例えば、研究には重症なパーキンソン病患者が参加していません。この事実は、血中カフェイン濃度と症状の重症度の関係性を指摘する能力に影響する可能性があります。
ムノス博士が指摘するもう一つの限度は、パーキンソン病を患う被験者は皆、研究を実施している期間もずっとパーキンソン病治療薬を飲んでいた点です。これは、パーキンソン病患者の体によるカフェイン代謝方法は処方薬の作用に影響を受けていた可能性があることを意味します。
しかしムノス博士は次のように説明しています。「もし研究結果が確証できれば、パーキンソン病の早期診断に関する簡単な検査を提示できるでしょう。しかも症状が現れ始める前に発見できる可能性があります。パーキンソン病は特に初期段階に診断することが難しいので、これは重要です」
こちらのおすすめ記事は、パーキンソン病を患った患者が大麻オイルを摂取すると5分もしないうちに痙攣作用が完全になくなるという効果が映像化されています。