ミネソタ大学薬学部の教授アイロー・レピック博士は、てんかん患者を悩ませる発作に対する有効な治療法を発見することに研究を捧げてきました。教授は、2014年にミネソタ州で医療大麻法が可決された時に重要な役割を果たしています。レピック博士は今、次のように問いかけています。「ペットの発作をカンナビノイドで治せるのか?」
愛犬の発作をカンナビノイドで治せる?
レピック博士が最近情熱を注いでいることについて、ザ・スター・トリビューン紙が伝えました。レピック博士は、消耗性で時には命に関わることもある制御不可能な発作に苦しむ患者に対して治療法を発見することに人生を捧げてきました。その研究の結果、てんかんに対する大麻の治療パワーを信じるようになりました。レピック博士の患者の多くは、てんかんに関連する症状を抑制するために大麻の錠剤を飲んでいます。
レピック博士の最新の関心は、大麻はペットのてんかんも治癒できるのか?ということです。犬は人間よりも高いてんかんの有病率を持ちます。博士は、大麻の錠剤は犬の治療にも有効だと考えています。
症候性発作を引き継ぎやすい犬種
全ての犬の約1〜5%が症候性または特発性発作のどちらかに苦しんでいる可能性があります。症候性発作は通常、脳の中または外に存在する異常によって引き起こされます(例:脳炎、頭部損傷、代謝問題、鉛中毒)。
しかし、特発性発作には根本原因がなく、遺伝性である可能性があります。症候性発作を引き継ぎやすい犬種には、ビーグル、ジャーマン・シェパード、キースホンド、ベルジャン・シェパード、ダックスフンド、ハンガリアン・ビズラ、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、アイリッシュ・ウルフハウンド、コリー、ボーダー犬が含まれます。
さらに、発作性疾患を患う可能性が高い犬種には、ゴールデンレトリーバー、アイリッシュセッター、セントバーナード、アメリカン・コッカー・スパニエル、ワイヤヘアード・フォックステリア、アラスカンマラミュート、シベリアンハスキー、ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル、ラブラドールレトリバー、ミニチュア・シュナウザー、マスチフ、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル、プードルが含まれます。
てんかん性発作に苦しむ犬は、発作を治療するのによく使用されている薬剤フェノバルビタールを一般的に処方されます。
フェノバルビタールは世界保険機構によって発展途上国における特定の種類のてんかんを治療するのに推奨されていますが、一方で無気力、食欲過多、めまい、混乱、長期肝臓障害を含む深刻な副作用を人間や犬に引き起こすことがあります。
より多くの企業がヘンプから派生した犬用の CBD調合薬を発表し、上記のような副作用を警戒する多くのペット飼主が代替的な治療の選択肢としてCBDを探っています。
議論を巻き起こすペットに対する医療大麻という考え
ペットに対する医療大麻の合法化という考えは奇抜です。とはいえ、獣医界の多くの医者が賛成とは限りません。アーナ・ブラットラグ博士は躊躇しながら、過去6年間にわたって多くの州が医療大麻を合法化して以来、大麻系製品の過剰摂取をしたペットの事例が448%増加したと話しました。
クッキーの隠し場所やその他「薬用食品」を食べた動物は、軽度の場合、足元がふらつく、目がトロンとする、ぼんやりするなどの反応が出ます。動物における大麻の過剰摂取は、けいれんや発作を引き起こすことがあります。また心拍数や血圧が危険なほど低く下がることもある、とブラットラグ博士は言います。
動物に適切な量の大麻を与えた際の大麻化合物がもたらす利点を探求するための研究が必要です。
ティム・クリエンケ獣医師は、発作やその他疾患を持つ動物に対する大麻治療の有効性について可能性は否定しない、と言います。獣医師と医者の間には多くの共通項があるため、多くの共同研究が行われるようになりました。しかし今の段階ではクリエンケは慎重です。
大麻の力を確信した患者
レピック博士の患者、ドーン・スワンソンは一晩中眠れないほどの繰り返す制御不可能な発作が大麻によって緩和されてから、大麻の治癒力をほぼ確信するようになりました。スワンソンはけいれんや深刻な痛みを抑制するために20種類以上の薬を飲んでいましたが、どれも効きませんでした。
スワンソンは最終的にレピック博士の元へ行き、医療大麻を処方されました。現在彼女は1日に3回、1粒の大麻錠剤を摂取しています。発作はもう何年も起こっていません。また大麻は痛みを和らげ、耐えられる程度にしてくれます。以前は運が良くても2時間しか眠れなかったのに比べ、今では1晩に6時間眠れるようになりました。「夜眠れるようになると人生が変わります」とスワンソンは言います。
カンナビノイドは犬の発作にも効くのか?
スワンソンの犬はてんかん持ちです。愛犬が発作を起こして震えながら、飼い主の膝によじ登ろうとする様子はとても心が痛むものです。薬は効果的ですが、副作用があります。できれば自然なものを与えたいと願う飼い主として、もし合法なら大麻を与えることを間違いなく考えるだろう、とスワンソンは言います。
「個人的にこれまで経験した全てのことから考えて、大麻をもっと解放しない理由が分かりません」
THCはペットに対して大麻の過剰摂取を度々引き起こしてきました。一方で、複数の人がCBDは有害反応をもたらさないと報告しています。これに関してはさらなる研究が必要です。カンナビノイドは発作を治せるでしょうか?最新の臨床試験はその可能性を示唆しています。
今後、獣医師が、大麻やCBDが動物に潜在的に提供しうる薬効について勉強する必要があるのは明白ですが、我々もこの件に関してさらに調査する必要があります。犬の飼主の多くがCBD治療によって飼い犬の症状が改善した証言する一方で、飼い犬をカンナビノイドで治療することを考えている人は、ペットに対して安全かつ有効な、情報に基づいた注意深い提案をすることができる知識豊富な獣医の指導のもとで治療するべきです。
これらのタイプの薬はまだ始まったばかりで、我々はその有効性や危険性についてもっと学ばなければなりません。しかし、我々が愛するペットの生活の質を向上することができる可能性を持つ治療選択の最前線を目の当たりにできるのは、本当にワクワクします。
カンナビノイドが効果を示す理由:エンドカンナビノイドシステム
そもそも何故ペットに大麻が効くかもしれない、という説が出てくるかと言うと、人間や犬、猫を含め全ての哺乳類が体内にエンドカンナビノイドシステムを持つことが分かっているからです。エンドカンナビノイドシステムとは、睡眠、食欲、疼痛、免疫反応などさまざまな生理機能を調整することに関わるシステムで、体内に存在するエンドカンナビノイドやカンナビノイド受容体のネットワークで構成されています。大麻を摂取することで体内に取り込まれたカンナビノイドは、エンドカンナビノイドシステムに作用し、生理機能の調整を助けてくれます。人間がCBDなど大麻に含まれるカンナビノイドを摂取することで何らかの効果を感じるのは、CBDがエンドカンナビノイドシステムに働きかけているからなのです。
犬も体内にエンドカンナビノイドシステムを持っています。つまり人間と同じように、犬も大麻に含まれるカンナビノイドの受け皿を持っているということです。このために大麻が犬の疾患に対して有効だった、という事例報告が上がっているのでしょう。現在、アメリカでは獣医師が公式に大麻を飼い主に勧めることは認められていませんが、市場には多くのペット用CBD製品が出回っており、飼い主はそれぞれ独自の裁量でCBDオイルをペットに与えているというのが現状です。CBDをペットに与えることに関心がある飼い主は、動物に対する医療大麻の研究はまだ初期段階であることを踏まえた上で考慮するべきでしょう。また犬は人間よりもカンナビノイド受容体が多いのでカンナビノイドに対して敏感です。実際に与える場合は、犬の体重も考慮してごく少量から始めるべきでしょう。

