ポーランドが医療大麻を合法化

11月1日、ポーランドが医療大麻を合法化しました。医療大麻合法化法案は2016年2月に元ラッパーで現国会議員クシシュトフ・マジェツが提案し、審議にかけられていました。とはいえ、2015年の時点で医療大麻の合法化に賛成する国民が約78%であったことから、法案の通過は比較的早かったと考えられます。

医療大麻の対象となる疾患は次の通りです。対象疾患は持つ患者は、特別な許可証を入手すれば、医療大麻の処方を受けることができます。入手できる医療大麻の形態は、乾燥大麻、抽出エキス、大麻オイルなどです。

・慢性痛
・化学療法による吐き気・嘔吐
・多発性硬化症
・けいれん
・治療が困難なてんかん
・トゥレット障害
・パーキンソン病
・腫瘍

ダウン症の少年クシシュトフの例

クシシュトフ・シェヴェはダウン症を持つ5歳の少年で、1日に200回以上の発作を起こしていました。2年前に医療大麻を試す前は、従来の薬が効かず死ぬための準備をするところでした。大麻オイルの投与を始めたところ、1日目から効果が見られたのです。2年前、すでにポーランドではCBDが高濃度で、THCはごく微量しか含まないCBDオイルを合法に使用することができました。CBDオイルは抗発作作用があるとして世界的に注目されている大麻成分です。

今回の医療大麻合法化に伴い、ポーランドではよりTHC濃度の高い大麻オイルの購入・使用が可能になります。THCは慢性痛やPTSD、緩和ケアなどにおいてより効果的な成分だと言われています。

合法化の問題点

しかし、合法化されたとはいえ、患者にとって入手が困難になりそうだという課題もいくつか残っています。今回の法案では、医療大麻の国内栽培が合法化されませんでした。ポーランドの現政府は、大麻の国内栽培合法化が娯楽用大麻合法化への動きを促すことを恐れて、国内栽培の合法化には踏み切りませんでした。ポーランドは、現在オランダとカナダから医療大麻を輸入しているため、輸入コストから医療大麻薬品の値段が上がるのは避けられません。月間治療費は日本円にして約6万3000円になることが予測されています。ポーランドにおける医療大麻治療の第一人者で小児神経科医のマレク・バハンスキは、現時点で国内の需要に対して供給がすでに不足している、と話しています。

また、医療大麻に関する知識、設備、経験のある薬剤師が少ないため、まずは医療大麻に関する教育が必要になるでしょう。現在、約15万件登録されている薬局のうち、約90%が医療大麻を扱う権限を取得すると考えられています。国内での入手が困難になった場合、患者は医療大麻が合法化されている他のEU加盟国でも購入し、国に合法的に持ち帰ることができます。しかし、費用が高額になるため、多くのポーランド人にとっては手が届かないことが予測されています。

法案の立案者であるマジェツ議員は、この次は「医療大麻の国内栽培の合法化を目指し、ポーランドを世界へ大麻を輸出する国にしたい」と話しています。

ヨーロッパのCBDオイル製品に関する医療大麻事情