乳がんは女性にとって最も一般的な浸潤がんで、肺がんに次いで女性のがん死因第2位です。1989年以来、スクリーニングや治療の進化によって生存率は劇的に改善されました。アメリカ国内には乳がんを克服した人が約310万人います。女性が乳がんで亡くなる確率は約37人に1人、つまり2.7%です。
2017年にはアメリカで約25万2710人が新たに乳がんと診断されることが予想され、そのうち約4万610人が乳がんによって亡くなります。このリスクを減らす重要な手段は、症状の認知やスクリーニングの必要性です。乳がんは男性でもかかることがありますが、本記事では女性の乳がんに焦点を当てます。
乳がんの基本データ
乳がんに関する重要なポイントを紹介します。詳細は記事本文にて述べていきます。
・乳がんは女性に最も多いがんである
・症状には胸のしこり、肥厚、皮膚や乳首の変化などがある
・危険因子は遺伝であることがあるが、アルコール摂取などの生活要因によってリスクが高まることもある
・手術から放射線療法、化学療法まで幅広い治療法がある
・胸のしこりの多くはがん性ではないが、しこりや変化に気づいたら診察を受けるべきである
乳がんの症状
乳がんの初期症状は通常、胸の組織の肥厚または胸、わきにできるしこりです。
その他の症状
・毎月の生理周期でも変化しない胸またはわきの痛み
・オレンジの皮のような胸の皮膚のひきつりや赤み
・乳首または乳首の周りの発疹
・乳首から血の混じった分泌液が出る
・乳首のくぼみまたは陥没
・乳房の大きさまたは形の変化
・乳房または乳首の皮膚の皮むけ、剥離、ただれ
胸のしこりのほとんどはがん性ではありませんが、しこりがある場合は医療専門家に診てもらいましょう。
乳がんのステージ
がんは、腫瘍の大きさやリンパ節またはその他部位に広がっているかどうかによって病気分類されます。乳がんのステージ分類には複数の方法があります。一つはステージ0から4までですが、より細かい病期に分類することもあります。
ステージ0:非浸潤性乳管がん(DCIS)と呼ばれ、がん細胞が乳管内に限られ、周りの組織に浸潤していない状態。
ステージI:腫瘍の大きさが最大2cmでリンパ節に転移していない状態。
ステージII:腫瘍の大きさが2cmで周囲のリンパ節に転移し始めている状態。
ステージIII:腫瘍の大きさが最大5cmでリンパ節の一部に転移している可能性がある状態。
ステージIV:がんが骨、肝臓、脳、肺など別の臓器に転移している状態。
乳がんの原因
思春期以降の女性の乳房は、脂肪、結合組織、乳腺小葉、授乳のための母乳を生成する小腺で構成されています。小さな菅が乳首まで母乳を運びます。がんでは、細胞が制御不可能に増殖します。この過度な細胞増殖ががんを引き起こすのです。乳がんは通常、母乳を供給する乳管または小葉の内壁で起こり始めます。そこから体の各部位へ広がります。
乳がんの危険因子
正確な原因ははっきり分かっていませんが、一部の危険因子によって発生率が高まります。そのうちのいくつかは予防することができます。
1.加齢
加齢とともにリスクは高まります。20歳から30歳の段階で乳がんを発症する確率は0.6%です。しかし70歳までに発生率は最大3.84%まで上がります。
2.遺伝
近親者が乳がんに罹患している、または罹患していた場合、リスクは高まります。BRCA1およびBRCA2遺伝子を持つ女性は、乳がん、子宮がんまたはその両方を発症するリスクが高いです。これらの遺伝子は遺伝性です。TP53もまた乳がん発生リスクの高さに関連付けられている遺伝子です。
3.乳がんまたは胸のしこりが過去にあった人
過去に乳がんを患った女性は病歴がない人と比べ、再発率が高くなります。良性またはがん性ではないしこりの一種があったことがある場合でも、後にがんを発生するリスクが高まります。異型乳管過形成または上皮内小葉癌の場合でも同じです。
4.乳房組織の密集
乳がんは乳房組織がより高密集している部分に発生する確率が高いです。
5.エストロゲン暴露ならびに授乳
長期間エストロゲンに暴露すると、乳がんのリスクが高まります。これは平均よりも初潮が早い、または閉経が遅いことによって起こります。この期間、エストロゲン濃度は高くなります。特に1年以上授乳期間があると、乳がんの発生率は下がります。これはおそらく妊娠、授乳期間にエストロゲンへの曝露が減るからです。
6.体重
閉経後に太り過ぎまたは肥満の女性は乳がんの発症リスクが高くなることがあります。これはおそらく、エストロゲン濃度が高くなるためです。糖分の摂取が多いことも要因と一つである可能性があります。
7.アルコール摂取
習慣的なアルコール摂取率が高いことも関係していると考えられています。1日3杯以上アルコール飲料を摂取する女性は乳がん発症リスクが1.5倍高いことが、研究で明らかになっています。
8.放射線曝露
乳がん以外のがんで放射線治療を受けると、後に乳がんを発症するリスクが高くなります。
9.ホルモン治療
ホルモン補充療法(HRT)や経口避妊薬の使用は、エストロゲン濃度を高めるため、乳がんと関連付けられています。
10.職業上の危険
2012年に研究者は、例えば職場などにおける特定の発がん性物質や環境ホルモンへの曝露は乳がんと関連する可能性があると結論づけました。また2007年には夜勤で働くことが乳がんリスクを高める可能性を科学者が示唆しましたが、最近の研究でその可能性は低いと結論づけられました。
美容インプラント手術と乳がん生存率
豊胸手術を行なった女性が乳がんと診断された場合、豊胸手術をしていない女性と比べて乳がんで亡くなるリスクが高くなります。またより後期に診断される確率が25%高くなります。これは検査インプラントががんを隠してしまうため、またはインプラントが乳房組織に変化を起こすためである可能性があります。さらなる研究が必要です。
乳がんの種類
乳がんにはいくつかの種類があります。
乳管がん:乳管に発生するがんで、最も一般的な種類です。
小葉がん:小葉で発生するがんです。
浸潤性乳がんとは、がん細胞が小葉または乳管内部から出て周囲の組織に浸潤し、他の部位に転移する確率が高くなる状態です。
非浸潤性乳がんは、がんが発生部位にとどまり、外に出ていない状態です。しかしこれらのがん細胞は最終的に浸潤性乳がんへと進化します。
乳がんは男性もかかることがありますが、女性よりも一般的ではありません。
診断
定期的な検査や、症状に気づいて診察を受けた際に、診断される場合が多いです。診断検査や手順などが確定診断に役立ちます。
胸の触診・視診
医師が、胸のしこりやその他症状を確認します。患者は腕を上にあげたり、横に下ろしたりなどさまざまな角度にした状態で立つ、または座るように指示されます。
画像検査
マンモグラフィ検査は、初期乳がん検査によく使用されるX線検査の一種です。胸のしこりまたは異常を検知するのに役立つ画像を映し出します。疑わしい結果が出た場合はさらなる診断を行います。しかし、マンモグラフィではがんではない疑わしい部位を映し出すことがあります。これは不必要なストレスや介入をもたらす可能性があります。
超音波検査は、個体塊や液体で満たされた嚢を識別するのに役立ちます。
MRI検査では患者に造影剤を投与して、がんの広がりを調べます。
生体検査
実験室分析のために組織サンプルを外科的に採取します。これによって細胞ががん性かどうか、またホルモン感受性かどうかなど、どのタイプのがんであるかが分かります。
診断でがんの病期を把握するためには以下の項目を確認します。
・腫瘍の大きさ
・どこまで広がっているか
・浸潤性か非浸潤性か
・体の他の部位にがん細胞が転移しているか
病期分類は回復の可能性に影響します。また最適な治療法を決定するのに役立ちます。
乳がんの治療
治療は以下の項目によって異なります。
・乳がんの種類
・がんの病期
・ホルモン感受性
・患者の年齢、健康全般、選好
主な選択肢
・放射線療法
・手術
・生物学的療法または標的薬剤治療
・ホルモン療法
・化学療法
選択に関わる因子には、がんの病期、その他疾患、個人の選好が含まれます。
手術
手術が必要な場合、その選択は診断および患者によって決められます。
腫瘍摘出手術:腫瘍の除去ならびに、残った少量の正常な組織によってがんの転移を防ぐことができます。腫瘍が小さく、周囲の組織から簡単に分離できそうな場合、この手術を行います。
乳腺切除手術:単純な乳腺切除では、小葉、乳管、脂肪組織、乳首、乳輪、皮膚の一部を切除します。根治的乳房切除術では胸壁から筋肉を切除し、わきのリンパ節も除去します。
センチネルリンパ節生検:乳がんがリンパ節に到達するとリンパ系を通じて他の部位にがんが転移することがあるので、一つのリンパ節の切除はがんの転移を防ぐことができます。
腋窩リンパ節郭清:センチネル節と呼ばれる部位にがん細胞があると、転移を防ぐためにわきにある複数のリンパ節の切除を勧めることがあります。
再建手術:乳腺切除手術後、元の状態に近い乳房となるよう再建手術を受けることができます。これは乳腺切除手術と同時でも、後からでも行うことができます。シリコンインプラントを用いる方法と、患者の体の別の組織を用いる方法があります。
放射線療法
がん細胞を破壊するために腫瘍を標的にして管理された量の放射線を照射します。手術から約1ヶ月後に化学療法を並行して行い、残ったがん細胞を殺します。患者は、目標およびがんの範囲に基づき、3〜6週間かけて1週間に3〜5回の放射線治療を受けます。各セッションは数分間です。
どのタイプの乳がんであるかによって、放射線療法が適切か決まります。副作用は、疲労感、リンパ浮腫、皮膚の黒ずみ、皮膚炎などです。
化学療法
再発または転移の可能性が高い場合、がん細胞を殺すために細胞毒性薬と呼ばれる薬剤が使用されることがあります。これは補助化学療法と呼ばれます。腫瘍が大きい場合、腫瘍を縮めて切除手術を行いやすくするために、手術に先行して化学療法が行われることがあります。これをネオ補助化学療法と言います。
化学療法は体の他の部位に広がった、または転移したがんの治療にも使用されます。また特に後期において症状を軽減することができます。エストロゲンは一部の乳がんの増殖を促進することがあるので、エストロゲン生成を抑制するのに化学療法を使用することもあります。
副作用には、吐き気、嘔吐、食欲減退、疲労、口の痛み、脱毛、感染症にかかりやすくなる、などがあります。これらの多くの抑制するための薬があります。
ホルモン阻害療法
ホルモン阻害療法は、ホルモン感受性乳がんの再発防止のために使用されます。エストロゲン受容体(ER)陽性がんおよびプロゲステロン受容体(PR)陽性がんに使用されることが多いです。ホルモン阻害療法は普通、手術の後に行われますが、腫瘍を縮小させるために手術前に行うこともあります。手術、化学療法、放射線療法を行えない患者にとって唯一の治療選択である場合があります。通常、効果は手術から最大5年後まで続きます。この治療法は、ホルモン感受性のないがんには効果がありません。
使用される治療例
タモキシフェン
アロマターゼ阻害薬
卵巣切除または抑制
卵巣を抑制するゴセレリンと呼ばれる黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(LHRHa)
ホルモン療法は女性の将来的な生殖能力に影響することがあります。
生物学的療法
標的薬剤は特定のタイプの乳がんを破壊します。用例にはトラスツズマブ(ハーセプチン)、ラパチニブ(タイケルブ)、ベバシズマブ(アバスチン)などがあります。これらの薬剤は全て異なる目的で使用されます。
乳がんやその他のがんの治療法は深刻な副作用をもたらすことがあります。患者は治療法を決定する際、関連するリスクや、その悪影響を最小限に抑える方法について医師とよく話し合ってください。
概観
ステージ0またはステージIの乳がんと診断された女性は治療を受ければ、少なくとも治療後5年間の生存率はほぼ100%です。ステージIVと診断された場合、5年生存率は約22%になります。
早い段階で症状を検知するには定期検査が有効です。女性の方はその方法について医師に相談しましょう。
予防
乳がんを防ぐ方法はありませんが、生活習慣の変化は乳がんおよびその他のがんの発症リスクを大幅に下げることがあります。
・過度のアルコール摂取を避ける
・新鮮な果物や野菜をたっぷり摂る健康的な食事
・十分な運動を行う
・健康的な体格指数(BMI)を維持する
授乳に関する選択や閉経後のホルモン療法の利用はリスクに関わるので、女性は慎重に考えましょう。発症リスクの高い女性は予防手術をするという選択肢もあります。
