オリンピックのような知名度の高いイベントでは、ゲームのトップで競技に打ち込んでいるアスリートを見て、その活躍を称えることが、スポーツや身体活動に取り組む若い人々を鼓舞するであろうという希望をもたらします。そのようなスポーツは、若者たちが自信を持ち、より満足のいく生活を導き、特に糖尿病、肥満、癌および心血管疾患のような慢性の病気の発症のリスクを減らすことにより、長期的な健康を確保するのに役立ちます。
しかし、残念ながら、適切な措置を講じていない場合には、回避できたスポーツ上の怪我によって最終的に痛みに行きつき、健康ではない道をたどってしまうことがあります。
アメリカスポーツ医学会 (AOSSM) の元会長ジェームズ・ R ・アンドリュース氏は、今年の5月に、アメリカでスポーツに取り組む若者の数が著しく増加したと述べました。推計では、14歳以下の子どもの350万人が、スポーツ関連の傷害のために医療的治療を受けている一方で、高校生アスリートで治療を受けている人は年間200万人を占めていることを示しています。
「思春期における傷害の主要な原因はスポーツによるものです。学校や仕事から離れた時間に、これらの傷害は遠大な影響を及ぼします」と、アンドリュース氏は言います。
この記事では、若いアスリートにおいてよく見られる怪我や、稀な怪我に注目しました。そして、オリンピックアスリートの傷害を追跡している新しいプロジェクトを概説し、けがを回避したり、最小限に抑えたりするためのいくつかのアイデアを紹介し、最後に子どものスポーツ傷害を防止するためのヒントのリストをご紹介します。
一般的なスポーツ傷害
アメリカ国立衛生研究所の一部である、国立関節炎・筋骨格・皮膚疾患研究所によると、最も一般的なスポーツの傷害は、事故、適切でないトレーニングの慣行や、間違った道具や機器の使用により起こります。体調がよくなかったり、また、ウォーミングアップや十分なストレッチをしていなかったりしたために、けがをすることもあります。
アメリカの何人かの傷害専門家は、使い過ぎややりすぎのために負傷する若いアスリートが増加するのを見てきており、これは8年生までにスポーツからドロップアウトしてしまう子どもの数の増加を部分的に説明しているかもしれないと述べています。
最も一般的なスポーツ傷害
- ひざの怪我
- 捻挫や筋違え
- 筋肉の腫れ
- アキレス腱損傷
- すねの骨に沿った痛み
- 骨折と脱臼
若いアスリートの傷害は大人の傷害に類似していますが、体が完全に発達していないため、常に同じ方法で治療できるとは限りません。
ひざのけがを例に取り上げましょう。
膝のけがの1つのタイプは、前十字靱帯(ACL)の損傷です。これは、サッカーや他の接触するスポーツを行うアスリートで最も頻繁に発生する重度の傷害です。20年前、ACL の傷害を持つ子どもや青年の数はわずかでした。今日、若者が早い時期からスポーツに取り組み、より競争的な環境に身を置いているので、ACLはより一般的になっています。
ニューヨーク市の特殊外科病院(HSS)の研究者が述べている、ACLの損傷が若者の間で増えているもう一つの理由は、ますます多くの若いアスリートが1つのスポーツに特化するようになり、通常はプロのスポーツ選手のみにみられた傷害のリスクにさらされるようになったことです。
しかし、若い人におけるこのタイプの膝の怪我は、例えば成人ではうまくいくACL再建手術でも、成長中の体では四肢の長さの不均等や奇形を引き起こす可能性があり、成長中の体では修復するのが容易ではないため、特に懸念されます。だからこそ、しばしば最良の道は「傍観」とされています。しかしながら、臨床医は、手術をしないこともまた初期の関節炎などの問題につながる可能性を理解し始めています。オールインサイド、全骨端ACLの再構築(AE)のような、成長中の体へのダメージのリスクが低い従来のACL再建手術に代わる治療法もありますが、一般的ではありません。臨床医は、若い人々のスポーツ傷害に関してより多くの研究を行うように呼びかけています。
背中と首のけが
背中および首の傷害は若いアスリートではあまり一般的ではありませんが、起こったときには、大きな挫折を引き起こすことがあります。アスリートは競技に復帰する前に、包括的で厳しいリハビリプログラムをやり遂げなければなりませんし、元のスポーツに復帰できないケースもあります。
アスリートの背中と首の損傷は、ほとんどが靭帯の捻挫や筋肉の損傷です。外傷とは異なり、これらは通常、過剰な運動、不適切な身体力学と技術、健康状態の不良、または不十分なストレッチなどにより起こります。アスリートは運動や競技中に背中の痛みを訴え、休養時にはその痛みは治まります。しかし、時には、同様の症状でより深刻な状態になることもあります。そのため、若いアスリートの背中や首の
損傷の適切な治療には、医師によるより良い診断が常に必要とされ、その診断には必要に応じて画像解析が使用されます。
北アメリカ脊椎学会によると、より深刻な背中と首の損傷には以下のようなものがあります。
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脊椎分離症と脊椎すべり症
脊椎の椎骨における特定の種類の異常(脊椎分離症)と、1つの椎骨が他のものと比べてずれる症状(脊椎すべり症)。脊椎をひねったり伸ばしたりしなければならない若いアスリート、特に体操選手によく見られる背中の痛みの原因です。
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スティンガー(「バーナー」または「神経圧迫」とも呼ばれます)
頭を後ろや横に強く動かして首の脊髄の神経を圧迫したり、頭を肩から離れるように横向きに強い力を加えて首や肩の神経を伸ばしすぎたりする状態です。サッカーやレスリングで最もよく見られますが、症状が突然、迅速に回復するため、傷害が報告されないこともよくあります。治療しない場合は、再発し、永続的な痛みや腕の脱力感の原因になることがあります。
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脊椎椎間板障害
成人のアスリートにおける背中の痛みの一般的な原因であり、若いアスリートではあまり多くなく、坐骨神経痛 (下肢の突抜けるような痛み)に関連する場合と関連していない場合があります。MRI スキャンを含む慎重な診断により、成長中の若い体に起こる脊椎椎間板障害に類似した、その他の考えうる原因を排除できます。
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ショイエルマン病または若年性脊柱後彎症
思春期の若いアスリートにおける背中の痛みのもう一つの一般的な原因です。これは、下部とは対照的に、背中の中ほどに発生し、背中の湾曲の原因となり、症状が進行するとドーム型にまで悪化します。多くの場合、運動はこの病気を修正するのには十分ではなく、もし、固定具を装着しても痛みを和らげることができないようなら、手術が必要な場合があります。手術後、アスリートが、元のスポーツを再開できる可能性は低くなります。
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オリンピックに関する研究:傷害・疾病パフォーマンスプロジェクト (IIPP)
完全にけがや病気を排除することはできませんが、そのリスクを軽減する方法を見つけることはできます。これは、傷害・疾病パフォーマンスプロジェクト (IIPP) と呼ばれる野心的で包括的な国立スポーツ研究を目的としています。2008年の北京オリンピックは、国際オリンピック委員会がスポーツ傷害のデータを集めた最初の大会でした。そしてイギリス(GB)チームが最低平均傷害率を記録し、オリンピックに向けての最高の調整ができたことを証明しました。北京オリンピックの直後に、英国スポーツ研究 & イノベーションチームと英国スポーツ研究所(EIS)が、今までに類を見ない、国内初の全国的なマルチスポーツ傷害と病気に関する疫学的研究を立ち上げました。
直後に、英国スポーツ研究 & イノベーションチームと英国スポーツ研究所(EIS)が、今までに類を見ない、国内初の全国的なマルチスポーツ傷害と病気に関する疫学的研究を立ち上げました。
このプロジェクトは、2009年にデータの収集と調査を開始し、現在も継続しています。スポーツの国立運営組織の医療スタッフやコーチングスタッフが、アスリートの傷害や病気の発生、トレーニングや競技におけるリスクへの暴露に関する詳細な情報を提出します。
EIS の医療サービスのディレクターのロッド・ジャック氏は、新しい治療法を取り入れる前に、病気や傷害の発生の本質を理解することが重要であると言います。
14種類のオリンピック種目が研究に参加しており、それぞれの競技における傷害の発生率、疾病の罹患率、および関連する危険因子に関する独自のデータセットを持っています。また、各スポーツにはけがや病気のリスクを軽減するための、特定の推奨事項があります。2009年から続くこのプロジェクトの傷害関連の結果は、以下のことを示しています。
- オリンピック競技におけるイギリス選手のトレーニング中断の67%は負傷が理由でした。
- アスリートの43%は、シーズンごとに少なくとも1つの怪我を負い、数名のアスリートは複数の怪我を負っていました。
- 1回の負傷は、平均して17日間のトレーニング中断と、1回の競技の欠場をもたらします。
- トレーニング中の負傷の割合と重症度は、競技中のものよりも低くなっています。
- 全体的に、膝、肩、腰、腰椎の負傷は最大のリスクをもたらし、スポーツができなくなる日数は最大になります。
EISのスポーツ医ケイト・ストラチャン博士は、アスリートに対して「昨シーズンはけがのためにX日を失った」と言うことができるので、このプロジェクトは強力なツールだと言います。このことに気付くことは、最高の装備とトレーニング環境とコーチを確実に持つことと同じくらい重要なことです。
EISの別のスポーツ医ポール・ジャクソン博士は、五種競技の担当です。下肢のいくつかの怪我とトレーニングの負荷との関連性に関する情報が、怪我の予防トレーニングを変更するのに役立ったと彼は述べています。 何人かの五種競技選手にとって、「これは、同じ日に、ランニングとフェンシングをしないことを意味しています」と付け加えました。
EISのリサーチ・サイエンティストの、デビー・パーマー-グリーン博士は、このプロジェクトは、怪我や病気を「パフォーマンス上の脅威」とみなす新しいアプローチを意味していると話しています。
リハビリを避けるためのプリハブ(先行治療)
プリハブはプリハビテーションの略語で、スポーツ医学や治療法の比較的新しい考え方です。これは、個々のスポーツ選手のために、それぞれの競技におけるけがを防ぐために個別に設計された運動プログラムです。
(プリハブという単語には、早く回復したり、手術の過程でしばしば起こる活性の低い状態に耐えたりするために、手術を受ける前に患者の体力を改善することを指す、別の用法もあります。)
プリハブの目的は、定期的で頻回な毎日のトレーニングによる反復的な動きや負荷を補正することによって傷害を避けることです。いくつかの点で、スポーツで最高のパフォーマンスを得るための運動トレーニングを、反復的な負荷の一つの形としてみることが出来ます。それは、コンピュータのオペレーターが手根管症候群や肩の傷害のような職業的な傷害を受けるのと同様に、傷害につながる可能性があります。
筋肉は繰り返し使用するとこわばり、体の強さと筋肉の整合の不均衡を生じます。このような不均衡は運動中に自然に起こりますが、トレーニングが反復的なので、日常的なプリハブのような補償活動を伴わない限り、トレーニングをするたびに不均衡が強くなっていきます。
アスリートのトレーニングの一般的な問題は、多くのアスリートやコーチが、特定のスポーツの訓練と別に体力を強化する方法として、上半身と下半身のリフティング、または基本的なスプリントとリフティング運動のような伝統的な方法に従っていることです。しかし、これでは相対的に体の中心が弱いままになっている可能性があります。この場合、プリハブのプログラムは、おそらく腰、胃、背中のコアに焦点を当てた、体幹の安定性から始めるでしょう。
基本的なコアプログラムが実行されたら、プリハブは、動的安定性を高め、それぞれのスポーツの技術を向上させる、より緻密で、集中的な動きを含む次の段階に移ります。
プリハブを成功させるために最も大切なことは、傷害が発生する前にアスリートがプリハブを開始する必要があることです。しかし、残念ながら プリハブを始めるための通常の動機は、傷害をきっかけにしています。典型的なシナリオは、アスリートがけがをして、スポーツセラピストやリハビリテーション(リハビリ)の専門家のトレーナーのところに行き、セラピストが、けがの再発防止のためにプリハブに登録するよう勧めるというものです。
プリハブが効果的にアスリートの役に立つもう一つの方法は、個人の必要性や適性、能力の変化に応じた継続的な進化を保証することです。エクササイズは、進行的で定期的に再評価される必要があります。また、アスリートに、挑戦し、やる気を起こさせ、プログラムに慣れて飽きてしまったりしないようにさせることも重要なことです。
成功したプリハブプログラムとは、アスリートのトレーニング・ルーチンに習慣的に取り入れられたプログラムです。セラピストは、アスリートのスポーツや彼らの強みと弱みについての詳細な知識を持ち、個人と率直でオープンな会話ができる必要があります。
体の不均衡に焦点を当てる
米国海軍士官学校を卒業し、元海軍の特殊部隊に所属し、フィットネスや自己防衛に関する複数の本を執筆したスチュー・スミス氏は、日常生活やスポーツの一般的な傷害を防ぐ方法として、プリハブを支持しています。
具体的には、プリハブプログラムは、人の体の不均衡に焦点を当てる必要があるとスミス氏は述べています。体には、自然な不均衡が多くあります。
「基本的には、体が行うすべての動き対して、その動作を行う(または動作に反する)ために伸びる(または曲がる)筋肉や関節の2つ以上のグループがあります」 とスミス氏は言います。
スミス氏は、ほとんどの不均衡は、体の次の領域で発生するといいます。
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腹部/腰
あまりに多くの人々が、トレーニングの際に、腹筋に焦点を当てて、腰には注意を払いません。
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胸部と背中の上部/後部の肩
多くの若いアスリートは、「ベンチプレストラック」を試みていますが、背中の上部や後部三角筋には注意を払っていません。これは肩の負傷や背中の上部の傾斜の原因になります。
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太ももとハムストリング(太ももの裏)
脚の裏側を十分に動かさないということがないようにするためには、非常に繊細な運動の組み合わせが必要です。ハムストリングの損傷は通常、スプリントやジャンプの際に起こり、またハムストリングの上部に発生します。効果的なリハビリプログラムには、ハムストリングの接続部の上部と下部を組み込んだストレッチが含まれます。
若いアスリートの負傷予防のためのヒント
アメリカの小児科学会は、次のことを推奨しています。
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オフの時間
体が回復するための時間を与えるために、少なくとも週に1日をオフにしましょう。
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休息をとる
負傷のリスクを減らし、熱中症を防ぐために、練習中やゲーム中に休息をとりましょう。
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適切な装備を使用しましょう
例えば、ヘルメット、マウスピース、フェースガード、保護カップ、および/または眼鏡だけでなく、首、肩、肘、胸、膝、すねのパッドは、それぞれのスポーツに適していて、適切にフィットするものでなければなりません。また、防具を身に着けているので、より危険でリスクが高いことができるとは思わないでください。
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たくさん水分をとりましょう
適度な運動をする人は、運動をしない人と比較して、癌にかかるリスクは約15%減少することが分かっています。
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低体温の人
熱中症を避けるために運動の前、運動中、運動後にたくさん水分をとりましょう。薄着にするのも効果的です。コーチおよびトレーナーは気温や湿度が高いときは、練習や試合を減らすか、または中止するべきです。
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筋力をつける
競技の前や、練習中に、プレイ中に使用する筋肉を強化するために、コンディショニング運動を行いましょう。
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柔軟性を高める
競技や練習の前後にストレッチを行うことで高められます。
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正しい技術を用いる
コーチやトレーナーは、プレイシーズン中に技術を強化する必要があります。
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競技の安全性
コーチおよび指導者は、ヘッドスライディング(例えば野球で)、スピアリング(相手に頭からぶつかっていくタックル)(フットボール)、ボディチェック(相手の動きを体で阻止すること)(アイスホッケー)に対して、厳格にルールを適用し、痛みがあれば活動を中止しなければなりません。
また、コーチや親に対しては、若いアスリートにとって勝利へのプレッシャーによる感情的なストレスを考慮するように助言し、彼らが以下の原則を取り入れるように勧めています。
「若いアスリートは努力、スポーツマンシップ、練習量で評価されるべきです。彼らは、ゲームや競技で負けることで、罰せられたり批判されたりするのではなく、努力したり、技術を向上させたりすることに対して報酬を与えられるべきです。主な目標は、楽しく、生涯を通しての身体活動のスキルを学ぶことであるべきです」
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出典:キャサリンパドック博士著