医療大麻に関する包括的な情報を見つけるのは簡単ではありません。その議論を巻き起こす性質上、医療大麻の使用、効果、リスクに関する見解は豊富にあり、また情報源によって大きく異なります。しかしなぜこれらの情報はこれほど相反するのでしょうか?またどうすれば虚実と事実を見分けられるのでしょうか?信頼できる情報源はどこにあるのでしょうか?
本記事では医療大麻にまつわる論争の原因を理解し、医療大麻に関して錯綜する情報を見極めるためのアドバイスを提供します。
1.医療大麻の賛成派と反対派
2.議論の歴史的背景
3.医療大麻と娯楽大麻の区別
4.大麻は規制当局のパラドックス
5.医療大麻賛成派と反対派の深い溝
6.信頼できる情報の選び方
7.選ぶとき気をつけるべきこと
目次
1. 医療大麻の賛成派と反対派
▼賛成
一部の医薬品より安全
一部の医薬品より中毒性が少ない
合法化に伴い現代科学的証拠が増えている
リスクに関する証拠の欠如
自己治療より合法産業の方が安全
豊富な使用の歴史
合法産業による製品開発が摂取方法の幅を広げた
大麻はアルコールやタバコより安全
薬理効果が証明されている
大麻の致死的過剰摂取は実質的に不可能である
医療大麻は従来の医薬品より副作用が少ない
子供に対する危険が限定的である
個人的な証言が有益
自分の健康に関する決断をする権利
▼反対
危険
中毒性がある
効果に関する証拠の欠如
安全に関して非倫理的である
認知機能が損傷するリスク
精神病のリスク
合法的な薬物乱用に関する下手な言い訳だ
医療大麻の合法化によって未成年による大麻使用が増加する
喫煙は危険である
ゲートウェイ・ドラッグ
薬理効果のないスケジュールI薬物である
致死的
交通において安全ではない
健康リスクの原因
副作用に関する科学的証拠
医薬品は承認され、全体的に検査されなければならない
現代医学の方が安全
子供による使用は安全ではない
医療大麻の流行は一時的なもの
(リストはProCon.orgから拝借)
全ての主張にある全体的な共通性は「健康」です。両者ともに、患者の健康が最も重要な側面であることを主張しているにもかかわらず、なぜこれほど意見が分かれてしまうのでしょうか?
2.議論の歴史的背景
大麻は薬なのか麻薬なのか、という疑問は何世紀にも渡って大々的に議論されてきました。
大麻の最初の医薬使用の記録は紀元前2900年まで遡ります。薬としての大麻の使用は、大麻の効能が西洋医学に持ち込まれた 1840年代に一般化しました。1850年にヘンプの抽出がアメリカ薬局方に導入されましたが、1941年に国際的議論を受けて禁止されました。
国際レベルで大麻が規制されたのは1925年のジュネーブ会議が最初です。ジュネーブ会議では(国際連盟)加盟国が、輸入国における医療的および科学的目的にのみ大麻、アヘン、その他物質の輸出を制限することに同意しました。1909年上海でアヘン問題の増加を懸念する議論が起こり、1912年にはコカインに関する同様の懸念が、1925年には大麻に関する議論が起こったことを受けて、これらの規制が決定されました。
これが1世紀に渡る大麻規制の始まりとなりました。当時、大麻がハードドラッグと同じくらい危険であると認識されたことが、今日の薬物分類に繋がっています。この見解によって1937年にアメリカ連邦麻薬局長のハリー・J・アンスリンジャーが議会前に「大麻は人類史上最も危険を招く薬物だ」と定義し、またハードドラッグ使用者の50%が「大麻のスリルを感じなくなった時にハードドラッグを使用しだした」と述べました。この発言が今日まで大麻に対する認識に影響しています。
最近では2016年に麻薬取締局(DEA)が、科学的理解が変わるまで大麻はアメリカにおいてスケジュールI薬物であり続ける、と裁定しました。大半の国で同様の法的判断が成されています。
3.医療大麻と嗜好大麻の区別
証拠の欠如が、大麻を薬理効果のある物質として認識しないDEAやその他諸外国の規制当局にとって主な主張でした。しかし多くの患者が規制当局の勧告にもかかわらず医療大麻を使用しています。これらの患者は、医療大麻を実際の薬というより健康補助食品として認識しています。
大麻の娯楽使用と区別するために医療大麻という言葉が世界中で使用されています。医療大麻と嗜好大麻の使用は、その目的が異なるため大きく異なります。嗜好大麻は向精神効果を求めて利用されますが、医療大麻使用者には「精神活性」を感じたいという欲求はありません。
したがって医療大麻とは、その薬物療法への類似性ではなく、エンドユーザーの目的のことを指しているのです。
医療大麻製造業者の大半は健康補助食品として自社製品を販売しています。なぜならそういった定義ならば、政府当局が患者から大麻製品を押収しないことを保証すると同時に、エンドユーザーにとって大麻の使用がより非難されないものに感じられるからです。
医療大麻を健康補助食品として販売できる理由はその起源にあります。医療大麻は通常、ヘンプとして一般的に知られる低濃度の弱い大麻草からできています。ヘンプは、使用者に向精神効果をもたらす大麻化合物THCの濃度が0.3%以下です。
一方で、ヘンプは一部の患者に対して有益な健康効果を持つ非精神活性化合物CBDを大量に含みます。ヘンプには向精神化合物が全く含まれないこともあります。したがってヘンプは、精神活性化させることなく症状を緩和することを目的としたクリーンな製品を提供することで患者のニーズを満たせる可能性があります。
医療大麻製造向けのヘンプ草は、嗜好用の大麻製品に使用される高濃度の大麻とは目的も品質も対照的に異なるのです。
4.大麻は規制当局のパラドックス
医療大麻の生産者も使用者も大麻製品を健康補助食品だと考えていますが、世界各地の政府のほとんどは大麻製品を薬として規制しています。これは大麻が薬理効果のない危険ドラッグとして分類されているからです。
医療大麻の規制は矛盾しています。薬理効果がないとみなされているのに、薬として規制されているのです。
この混乱は非常に現実的なもので、これこそが大麻が多くの国で違法または厳しく規制されている主な理由です。その原因は医療大麻の利用に伴う効果と副作用の臨床的証拠の欠如にあります。大麻使用の効果およびリスクに関する研究や化学的検査は存在しますが、実質的証拠は限られています。この実質的証拠の欠如のために、政府は大麻を医薬品として規制できないのです。
しかし医療大麻を健康補助食品とみなすなら、なぜ医薬品として規制しなくても良いのではないでしょうか?
一部の医療大麻製品が持つ薬理的効果のため、大麻は医薬品規制の枠組みの基準に当てはまるのです。したがって、矛盾する法的分類にもかかわらず定義上は医薬品として規制されます。
大麻が単に健康補助食品であることを証明できず、同じようにその治療効果も証明できない一方で、大麻に関する法的な行き詰まり状態によって引き続き大麻の合法性、効果、安全性について疑問や混乱が引き起こされています。
5.医療大麻賛成派と反対派の深い溝
一般的に両者は政治的主張に根ざしています。反対派は通常保守的で、リベラル派は医療大麻を支持する傾向にあります。無党派層を自称する人々は医療大麻を支持することが多いです。両者の間に深い溝があるのは、歴史的な影響によるものです。派閥の名前が示唆するとおり、政治的保守派は古い美徳や道徳を尊重しますが、政治的なリベラル派は美徳や道徳は社会によって評価されるべきである、というより自由で現代的な解釈を信じる傾向にあります。
保守派はアンスリンジャーのような人々の見解を支持することが多く、したがって大麻の違法性を支持します。リベラル派は大麻を危険な乱用薬物としてよりも自然の一部として認識する傾向があります。したがってリベラル派は医療大麻の利用をサポートすることが多いです。しかし、医療大麻に関する議論の全ての側面と同様、どの見解も100%実行可能ではありません。
6.信頼できる情報の選び方
相反する情報によって、医療大麻を試すべきかどうかという決断をするのが困難になります。とはいえ、自分を疑念から守るには自ら批判的で慎重になることです。医療大麻の重要な側面の一つは、情報に対して批判的になることです。情報サイトでも販売会社サイトでも、ウェブサイトの中で研究に関して言及しているものがあれば、リンクをクリックするか研究タイトルを検索して実際にその研究が存在するのか確認しましょう。見つからなければ、その情報は信用しないでください。
同じように販売会社が明白な証拠書類もなく製品の効能に関する主張を行なっている場合も、批判的になってください。信頼できる販売会社は、要求されれば必ず製品の検査結果を提供します。そのような検査は第三者の検査ラボによって認証されるべきです。独立した研究所の検査は最も客観的な結果を提供するからです。それによって購入した製品が高品質かどうか分かります。
とはいえ、どの販売会社に検査結果情報を要求するかという選択も難しいものです。したがって、販売会社を探す際は安全な作業要領の保証があるか確認してください。適正製造基準解説(GMP)などの公的資格や、製品がオーガニックな過程で生産されていることの認証が望ましいでしょう。オーガニック認証は特に製品購入時の優れた前提条件になります。なぜならオーガニック製品には品質、効力、安全性の土台を傷つけるような、医療大麻に含まれるべきではない化学物質や農薬、その他汚染物質が含まれないからです。
7.選ぶとき気をつけるべきこと
どのような情報が外部情報源から提供されようとも、医療大麻を使用したいかどうかは自分で決めることです。しかし現在は膨大な量の相反する情報があるため、決断を下すのは簡単ではありません。自分または愛する人の病状のために医療大麻を利用したい場合は、新しい健康補助食品プログラムを始める前に必ず医師に相談してください。特定の使用に関する研究を見つけたら、その情報源に対して批判的になり、その結論を裏付けることのできる他の研究を探しましょう。
自分も担当医も医療大麻から恩恵を受けられるとみなした場合は、信頼できる販売会社を選ぶことが重要です。選んだ大麻製品が薬局に無い場合は、販売会社のウェブサイトにある情報に対して批判的になってください。情報が他の情報源から露骨にコピーされていないか、または実業の記述が不足していないか確認しましょう。
医療大麻を使用し始める際は、慎重に摂取を開始してください。他の製品と同様、これまでに感じたことのない効果を感じる可能性があります。その効果は恐ろしいものでも非常に強力なものでもないでしょうが、それでも最初の医療大麻を摂取するときは親しい人がそばにいると患者にとって心強いでしょう。
矛盾する情報は混乱を招きますが、用心して、使用前に医師に相談すれば、最も自分に合った方法を見つけることができるでしょう。
参考:Endoca