2018年の前半、私たちは広範囲の疾患や癌における大麻の治療上の利点に対する理解を深めてきました。この記事では、過去数ヶ月間に発表された最も重要な大麻研究の一部を紹介します。このリストは決して包括的なものではなく、同業者による審査を受けた研究論文のみを提示するものですが、続々と発表される今後の研究にも注目ください。
注目すべき研究一覧
目次
1.大麻は高齢者における疼痛治療において安全・有効である
高齢者(65歳以上)は急速に医療大麻使用者群として増加しているので、高齢者における大麻の有効性および安全性の理解を深めることが必要とされています。これに対処するため、イスラエルで少なくとも過去6ヶ月間に医療大麻を使用したことのある900人以上の高齢患者に対して最新調査が実施されました。
この研究では、患者の75%が過去に大麻を使用したことがなかったため、高齢者における新たな体験を強力に評価するものとなりました。大半の患者は癌の痛みを含む疼痛関連疾患に対して大麻を使用し始めましたが、そのうち少数の患者は化学療法に伴う吐き気、パーキンソン病、心的外傷後ストレス障害、クローン病の治療に大麻を使用していました。THC優勢の大麻品種が最も多く使用されていましたが、CBDが豊富な品種は特に疼痛、化学療法の副作用、パーキンソン病、炎症性疾患に苦しむ患者においてよく使用されました。
大麻品種に関係なく患者の93.7%が、大麻を6ヶ月間使用した後、症状が改善したと報告しました。特に鎮痛において有益であり、平均して痛みを10段階の8から4まで改善させました。この鎮痛効果のため、15%の患者がオピオイド系鎮痛剤の摂取を完全にやめました。
全体的に、大麻使用はほぼ副作用がなく、生活の質(QOL)を「悪い」から「良い」に改善しました。めまいや口の渇きなど最もよく見られた副作用は、それぞれ患者の10%、7%のみが報告しました。2%以下の患者が、混乱、見当識障害、虚弱を報告しました。
これらの研究結果は、鎮痛関連疾患の治療に関して高齢患者における医療大麻の安全性および有効性を強く裏付けています。
2.CBDは加齢脳疾患における鉄による損傷効果から保護する
発表日:2018年3月5日
ヒトは生涯をかけて体や脳内にミネラル量を蓄積します。特定のミネラル量が過剰に多いと、健康問題を引き起こすことがあります。例えば、特定の脳部位における鉄の集積はアルツハイマー病やパーキンソン病といった加齢疾患の要因であると考えられています。
鉄分過多による損傷効果から保護することは、神経変性加齢疾患から脳を保護する新たなアプローチとなる可能性があります。鉄分過多は、細胞の主なエネルギー生産源であるミトコンドリアの機能を阻害し、DNAを破壊します。これによって脳細胞機能が損傷されます。また、これによって脳の炎症を増加させ、さらなる損傷を引き起こすフリーラジカル過多が引き起こされることもあります。
ブレイン・リサーチ・ブレティン誌に発表された研究では、CBDがラットにおけるミトコンドリア機能に対する鉄分過多の損傷効果から脳を保護することが分かりました。CBDは過剰な鉄分を除去しませんでしたが、代わりにより破壊が少なくて済むようにミトコンドリアがより適切に鉄分を処理することを可能にしました。またCBDは、ミトコンドリアのDNAに対する鉄分の損傷効果を阻止しました。
CBDの保護メカニズムは直接的に評価されていませんが、CBDの強力な抗酸化作用及び抗炎症特性がミトコンドリアならびにそのDNAに対する損傷から保護するのに役立つ可能性が提示されました。この研究結果は、加齢脳疾患における予防ツールとしてのCBDの使用を裏付けています。
CBDはprophylacticであ可能性があるという概念が、ますます大きく支持されつつあります。CBDはまた、心血管系イベントや脳損傷、アルコールによる損傷によって引き起こされる脳損傷から脳を保護することが分かっています。
3.大腸がん予防におけるバランスのとれたTHCおよびCBDの事例
発表日:2018年1月1日
多くの人々が、疼痛や悪心といった癌関連の症状の治療に大麻を使用しています。しかし特定のカンナビノイドが抗がん効果を持つ可能性を示す臨床検査による証拠が増加しています。
オーストリア科学者による研究が、CB1活性化が結腸がんにおいて腫瘍抑制効果を持つ一方で、GPR55受容体活性化は腫瘍促進効果があることを究明しました。CB1受容体は精神活性作用のあるカンナビノイドTHCの主要ターゲットです。THCはCB1受容体を活性化することによって、腫瘍抑制効果を持つ可能性があります。GPR55は最近、CBDのターゲットであることが特定されました。CBDはGPR55受容体の活動を阻害することが分かっています。したがって、CBDはGPR55の活性を阻害し、腫瘍増殖を抑制することによって大腸がんから保護することができる可能性があります。
これらの研究結果は、THCおよびCBDの組み合わせが腫瘍抑制的CB1受容体を活性化し、また腫瘍促進的GPR55受容体を阻害することによって、結腸がんから保護できる可能性を示しています。CB1受容体に対するTHCの効果に対する耐性の発生を、CBDが予防することも付加的利点です。したがって、THCとCBDは仮説的に、結腸がんを予防し、治療に対する耐性を阻止できる可能性があります。しかし、この研究は結腸がんにおけるTHCおよびCBDの利益の背景にあるメカニズム論理のみを裏付けるものです。これが臨床治療戦略となるためには、ヒトにおけるさらなる研究が実施されなければなりません。
CBDはTRPV1受容体の活性化によって子宮内膜がんから保護する
発表日:2018年2月13日
別の癌関連研究では、ポルトガルの科学者らが子宮内膜がん(子宮がん)におけるTHCおよびCBDの効果を調査しました。
CBDはTRPV1受容体を活性化することによって、これらがん性細胞の多くを死なせます。子宮内膜がんはエストロゲン値が一貫して高いことの結果、発症します。その原因は遺伝によるもの、または更年期間のサプリメント摂取によるものです。このリスクをモデル化するために、科学者らは実験室で、高用量のエストロゲンに露出した際にがん性となる細胞株を使用しました。CBDはこれらのがん細胞の多くの細胞死を引き起こしましたが、一方THCは効果を示さないことが分かりました。この保護効果にCB1およびCB2受容体は関わっていませんでしたが、代わりにCBDはTRPV1受容体を活性化することによってがん細胞を殺していました。TRPV1受容体は、CBDが持つ複数のターゲットの一つであることが知られており、THCによって活性されません。このことは、THCがこのタイプのがんに効果を示さない理由を説明しています。
一部の人にとって子宮がんの治療に対する反応は良好です。しかし、患者のかなりの割合は治療に反応せず、年間約9万人が亡くなっています。CBDは、従来の治療アプローチに反応しなくなった患者にとって有望な治療オプションを表しています。しかし、これらの研究結果が人間の患者において再現されるまで、楽観的になりすぎないようにしなければなりません。それまで私たちの希望はペトリ皿の中に限られています。
5.THCは二重盲検プラセボ対照研究においてオピオイドの鎮痛効果を強化した
発表日:2018年2月5日
大麻がオピオイドの蔓延を解決できる一つの方法は、鎮痛に必要とされるオピオイド系鎮痛剤の処方箋量を減らすことです。THCは、THC、オピオイドを単体で摂取するよりも組み合わせた方がオピオイドと相乗してより強力な鎮痛効果を持つと考えられています。これによってTHCは低用量オピオイドの効果を強化し、またオピオイドの消費を抑制します。大麻がオピオイドの使用を抑制するという考えは十分な根拠がありますが、これまで一度の臨床研究の黄金基準である二重盲検プラセボ比較試験の対象になっていません。
ニューロサイコファーマコロジー誌に最近発表された研究では、喫煙した大麻(THC0%または5.3%)とオキシコドン(最低限度の鎮痛用量5mgまたは閾下2.5mg)を組み合わせた際の効果を検査するために二重盲検プラセボ比較検査を実施しました。大麻も閾下用量のオキシコドンも増加したヒトの痛覚域値において有効でなかったことが分かりました。しかし、5.3%THCを含む大麻と閾下値のオキシコドンを組み合わせたとき、大幅な鎮痛を引き起こしました。
どちらの薬物も単体で鎮痛に効果的ですが、THCとオピオイドの間には(THCによって活性化された)CB1受容体および(オキシコドンのオピオイド化合物によって活性化された)µ-オピオイド受容体を通じて相互関係があることを研究結果が示しています。まさに、CB1受容体とµ-オピオイド受容体は、片方の活性化がもう一方の効果を強化するように連結することができるという証拠があります。これは、低用量THCまたはオピオイドによる活性化では不十分だが、組み合わせた際に鎮痛効果を示す理由を明らかにしています。
この研究は、大麻がオピオイドの代替になったり、その使用を軽減したりすることを示す、ますます増えつつある証拠を基盤にしています。大麻はオピオイドの使用増加を単純に阻止するだけだとしても、重要な結果をもたらすのです。
出典:Leafly
