がんについて⑥〜免疫チェックポイント阻害剤〜

●細胞障害性T細胞のブレーキを妨害
●効く人には、より長く効く
●頻度は少ないけれど激しい副作用もある

その名は免疫チェックポイント阻害剤

免疫チェックポイントとは、免疫のブレーキとして働く免疫細胞上の分子の総称です。その阻害薬は、免疫細胞の特定部分にくっ付きます。それで抗がん効果が発揮されるので、ブレーキを外すことで免疫によるがん攻撃を誘導しているのだろうと考えられています。

2016年6月現在、承認されているのはニボルマブ(商品名:オプジーボ)、イピリムナブ(商品名:ヤーボイの2剤です。前者は悪性黒色腫と非小細胞肺がん、後者は悪性黒色腫に使用が認められています。さらに、前者は、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫にも適応拡大を申請中です。また、ペムブロリズマブ(商品名:キートルーダ)という薬も悪性黒色腫と非小細胞肺がんで承認申請中です。この他のがん種への適応拡大、この他の薬剤開発も世界中で精力的に進められており、今後どんどん登場してくると考えられます。

ニボルマブは、免疫の細胞障害T細胞(いわゆるキラーT細胞)の表面にあるPD-1という分子にくっ付く抗PD-1抗体です。キラーT細胞が排除すべき細胞に対して攻撃を加えようとした時、相手の細胞がPD-1という分子を出してPD-1と結合すると、攻撃が止まります。このPD-1に抗体が先回りしてくっ付くことで、がん細胞がPD-1を出しても攻撃は止まらないという仕組みです。ぺムブロリズマブも抗体PD-1抗体です。

イピリムマブは、T細胞が抗原提示細胞(樹状細胞やマクロファージ)から、排除するべき細胞の情報などの刺激を与えられて活性化(キラーT細胞としての分化増殖)した後で出てくるCTLA-4に抗体が先回りしてくっ付くことで、キラーT細胞が作り続けられることになります。

単剤だと2~3割の人に効果

特に患者数の多い非小細胞肺がんでニボルマブを使う場合、現在は、白金併用療法(~プラチンという名前の抗がん剤を含む多剤併用療法)を行い、効果がなかったか効果がなくなったといった時に対象となります。

これまで白金併用療法に使われていたドセタキセルと比較した臨床試験では、生存期間延長の効果が見られ、副作用の頻度は少なめで、しかも効いた場合には効果が長く持続するというデータも出ているため、多くの期待が集まっています。

ただし、誰にでも効くというわけではなく、1年以上の生存を得られているのは4~5割、2年以上だと2割程度になります。効いた場合にも免疫が1個残らずがん細胞を退治してくれて完全に治ってしまうことまで期待するのは、まだ無理があります。

また、Ⅰ型糖尿病や大腸炎など命に関わるような自己免疫疾患が突然起きることもあります。これらの副作用は、いつどこに出るのか現状では予測不能です。抗PD-1抗体よりも抗CTLA-4抗体の方が免疫を活性化する早い段階で働くためか、後者の方が副作用の頻度は高めです。

希望の星だが課題も山積

●費用がとんでもなく高い
●効くか効かないか事前に分からない
●効かに人には効かない

免疫チェックポイント阻害薬は、その働き方が全く新しいのと同時に、その薬価がとてつもなく高いことでも社会の注目を集めています。2016年5月現在のニボルマブの薬価は100mgが73万円、20mgが15万円です。用法は体重1kgあたり3mgを2週間に1回投与というのが一般的で、体重60kgの人なら薬代が年間3500万円になります。

健康保険の高額療養制度の対象になるので、患者本人の負担はその他の抗がん剤治療とほとんど変わりませんが、差額の年約3300万円が保険組合など保険者の負担になります。
肺がんは2014年の死亡者が約7万3千人、うち非小細胞肺がんは約6万人と患者数が多く、規模の小さな健保組合はその負担で潰れてしまうかもしれません。

それも確実に効く人だけに選んで投与できるならまだしも、現段階では事前に効果を予測する方法がありません。また、効いた人は投与をやめてもよいのかが分かっていないため、いったん投与を始めたら、腫瘍が明らかに増大するなど効いていないことがハッキリするまでは投与を続ける必要がありそうです。安い薬ならそれで一向に構わないのですが、とにかく高額のため、そんな人が何年分も溜まったら大変なことになります。
この価格の問題は、国民的な議論が必要かもしれません。

なぜ効かない人がいる?

ニボルマブが効かない人は、免疫のがんを攻撃する流れが途切れていて、がんを攻撃できる充分な量のキラーT細胞が腫瘍の周辺に到達していないと考えられます。ただ、この理屈が本当に正しいのかも徐々に確かめられているという段階です。このモデルが正しいのかも含めて、事前に効くか効かないかを見分ける方法がないか、一度効いた後のやめ時を知る方法がないかなど、科学的解明が必要な課題が山積しています。

これらのナゾが解明されてくると、2次治療に単独で使うとなぜ2~3割の人にしか効かないのかという理由も分かってくる可能性が高く、もっと効く人の割合を増やす方法など上手な使い方も見えてくることでしょう。そうなった時、薬物療法の主役は免疫チェックポイント阻害薬になっている可能性が高いと考えられます。

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出典:がんがわかる本