医療大麻の重要な成分が、幻覚や幻聴に苦しむメンタルヘルス患者に全く新しいタイプの治療法を提供できる可能性があります。統合失調症にCBDが有効性を示すかもしれないという記事は以前にも紹介しましたが、今回はロンドンで正式に行われた臨床研究の結果を紹介します。
大麻草に含まれる主なカンナビノイドの一種、カンナビジオール(CBD)の効果を調べる初の臨床試験で、統合失調症患者の症状を緩和することができると分かりました。CBDは、大麻草の主な活性成分であり、妄想や不安を引き起こすことのある物質、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)とは広く反対の効果を持ちます。また、CBDは精神活性作用がないので、娯楽性はありません。この特徴のためにCBDはメンタルヘルス疾患、てんかん、パーキンソン病、慢性痛などの潜在的治療薬として研究されるようになりました。
統合失調症の症状
統合失調症は幻聴または幻覚、「自分に危害を加える陰謀がある」など患者が根拠のない強い信念を持つような妄想などで特徴付けられるメンタルヘルス疾患です。統合失調症の治療には60年間に渡って抗精神病薬が使用されてきましたが、その有効性は限られており、深刻な副作用を起こすこともあります。軽度の副作用として錐体外路症状(EPS)、高プロラクチン血症、眠気、体重増加などがありますが、重篤な副作用としては糖尿病、代謝障害、 脂質異常症、アナフィラキシー、悪性症候群などが起こる場合もあります。
ロンドン大学キングス・カレッジの精神医学・心理学・神経科学研究所のフィリップ・マグワイヤ教授は研究の筆頭著者です。従来の薬は気分を変化させる化学物質ドーパミンに対する生物学的受容体を阻害することによって作用している、と教授は述べました。
「しかし、精神病において機能が変化する神経伝達物質はドーパミンだけではありませんし、一部の患者においてドーパミンは比較的正常に機能しています。異なる神経伝達物質系を標的にする新たなタイプの治療法が必要なのです」
CBDを用いた臨床試験の結果
この臨床試験で、CBD治療を受けた患者はプラセボを与えられた患者グループと比べ、統計的に大幅な精神病症状の効果が見られました。イギリス、ルーマニア、ポーランドから参加した83名の患者は、疾患重症度や健康においても大きな効果が見られたことが担当医によって測定されました。認識能力の改善の兆候も見られましたが、こちらは統計的に大きな変化ではありませんでした。
観察されたすべての効果は穏やかなものでしたが、患者は従来の抗精神病薬を使用していたので、CBD治療は従来の治療に付加的効果を提供できることが示されました。
研究結果は12月15日にアメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー誌に発表されました。論文には次のように述べられています。
「これは我々の知る限り、統合失調症における初めてのCBDに関するプラセボ対照試験です。6週間にわたる抗精神病薬の補助的なCBD治療は、陽性症状においても、治療する臨床医の改善および疾患重症度に対する印象においても大きな影響が合ったことをデータは示唆しています」
別の患者グループにおいてこれらの研究結果を確証するためにより大規模な臨床試験が必要だ、とマグワイヤ教授は付け加えました。
「CBDが実際にどのように作用するのかはまだはっきりしていませんが、抗精神病薬とは異なる方法で作用しています。従ってCBDは新たな治療法類となれる可能性があります」
「さらに、CBDには重度の副作用が伴いませんでした。患者は副作用を懸念して抗精神病薬を摂取したがらないので、これもまた潜在的に重要な点です」
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CBDが統合失調症の症状緩和に有効であることを示す初のプラセボ対照試験が行われたということで、実に喜ばしいニュースです。もちろんさらなる研究が必要ではありますが、抗精神病薬としてのCBDの可能性がまた一つ明らかになりました。こういった研究が今後どんどん加速していくといいですね。

参考:Independet