骨がすり減るのも、筋肉が痛みつけられるのも、アメリカンフットボールにおいては当たり前のこと。怪我をしていてもフィールドに立ち続けることは、NFLの選手たちに常に要求される、厳しい必須条件です。
先日、アメリカにおけるもう一つのメジャーなスポーツ、野球において、選手が大麻やその関連の化合物(CBDなど)を使用することが認められました。これに伴い、アメリカンフットボール選手がいかにして痛みと付きあっていくべきなのか、という議論が高まっています。
メジャーリーグでCBDや大麻の使用が認められた
2019年12月、メジャーリーグ(MLB)が、THCやCBD、そして大麻などの天然カンナビノイドを薬物乱用リストから外しました。この決定は、オピオイド系鎮痛剤への依存が選手の間で広がっていることに対する懸念の影響のもと下されたもので、幅広い層からの賞賛を受けました。ある元アメリカンフットボール選手は、ロイターに対し、これに似た方針が定められればNFL選手たちが抱える慢性的な痛みとの付き合い方に、ポジティブな展望が開けるだろうと語りました。
「どんなプロスポーツの分野においても、この方向性に向かっていくと思いますよ。いつNFLがそうなるのかはちょっとわかりませんけどね」
そう語ったのは、デンバー・ブロンコスで二度のスーパーボウル制覇を成し遂げた、ランニングバックの殿堂、テレル・デービスです。大麻由来の化合物の効果を知ったデービスは、去る5月、CBD配合のEFYというスポーツ飲料を共同設立しました。
NFLには、非合法物質についての厳しいルールがあり、大麻やアルコールの違反で出場停止を受ける選手もしばしばいます。
2002年のプレシーズンの頃に引退したデービスは、MLBの方針に似た形のルールをNFLも採用することで、選手たちのクオリティ・オブ・ライフを高めることができるだろう、と語ります。
「必要なのは、選手に選択肢を与えることなんです。なぁ、別に抗炎症剤は他にも種類があるんだぜ、と言える環境を作ることが必要なのです」
カンナビジオールとしても知られているCBDは、THCを含まない化合物であり、ここ数年でボディローションや経口摂取可能なリキッド、カプセルなどの商品として幅広く売り出され、市場を大きく広げてきています。CBD支持派の人々は、不安障害を取り除く効果や、痛みをコントロールする効果があると絶賛しています。
CBDビジネスに参入する元スポーツ選手
他にも何人かの元NFL選手が、キャリアを終えたのちCBDビジネスに乗り込んできています。その中には、3度のスーパーボウル制覇を果たし、2019年に局所用薬剤会社アバカス・ヘルスとのパートナーシップを組んだロブ・グロンコウスキもふくまれます。その一人です。グロンコウスキはCBDがプロスポーツの現場に取り入れられることを支持しています。
「CBDを使うと、別に奇跡のようなことが起こって痛みが癒されるというわけではないのですが、軽減はされるはずです。特にアメフトにおいては、何度もぶつかり合いますよね。その度に、筋肉の細胞がダメージを受けているのです」
スポーツ史上最高のパフォーマンスを誇るタイトエンドの一人で、30歳の元ニューイングランド・ペイトリオッツの選手だった彼は、キャリアの中で足首、前腕、背中、前部十字靭帯、内側側副靭帯などに多くの怪我を負い、手術を受けてきました。
「MLBがCBDを解禁したことで、それが素晴らしいスタートとなり、NFLを始めとする他のメジャー・スポーツの組織がその後に続くことになれば最高ですね」
NFLでもCBDの使用可否をめぐる議論が高まる
今月、NFLと選手の組合による疼痛管理委員会は、CBDが許可されるべきかどうか調査する目的でフォーラムを開催しました。国立衛生研究所の痛み・偏頭痛を概観する研究のプログラム・ディレクターであるマイケル・オッシンスキー博士は、CBD支持者によって主張されるさまざまな効果を裏付けする証拠はしかし、まだ数少ないと語りました。
「痛みは、主観的な性質のあるものですから、患者は自身が感じている痛みに対するコントロールする力を多く持っているのです。一方、炎症については、いくつかの証拠が提示されています。しかし痛みが奇跡のように治るわけではないということも分かっています」
大麻とCBDについて、NFLは痛みに対処するためのさまざまな方法について「全て検討中である」と語りました。NFLの最高医療責任者であるアレン・シルズ医師は次のように話しています。
「NFL選手たちに何かしらのセラピーを勧めたり認めたりするには、それが設備であれトリートメントであれ治療処置であれ、その証拠について非常に高い基準を満たしている必要があります」
一方、NFLを生き抜いてきた元選手たちは、CBDを使うという選択肢は、選手たちの手にゆだねるべきだと語ります。
「ゲームが終わると私は文字通り、脚を引きずりながらフィールドを出ました」そう語るのは、プロボウルラインバッカー、ローファ・タトゥープ。彼はシアトルシーホークスでの6シーズンに渡るキャリアがありましたが、負傷によってそのキャリアに終止符を打ちました。
2013年に引退したのち、タトゥープは調査を重ねた上でCBDの使用を始めました。そして彼は、ワシントンに拠点を置く、ZoneIn CBDを2019年に共同設立したのです。NFLのキャリアの間、10回もの手術を経験したタトゥープはこう語ります。
「傷跡は未だにしっかり残ってますよ。CBDは痛みを隠すのではありません。痛みと上手く付き合っていくことができるようにしてくれたんです。NFLやNFLPAに願うのは、我々の声を聴くこと、CBDがいかに選手のキャリアにおける外傷を治療したり、治してくれたかということを知ってほしいのです。私自身の父がその中で生き抜いてきた姿を見てきたので、私だったら喜んで支持します」
「今ならよくわかります。アメリカンフットボールじゃなくて、野球をやれ、って父がいつも言っていた意味がね」
WADA(世界アンチドーピング機関)は2018年にCBDを禁止薬物から除外し、今ではUFC選手、オリンピック選手、プロゴルファー、ランナー、テニス選手、アマチュアアスリートら多くのスポーツ選手が、トレーニングや回復にCBDを使用しています。そんな中2019年12月には野球のメジャーリーグがCBDとTHCを薬物乱用リストから削除したと発表しました。現在アメリカでCBDを認めていないプロスポーツはバスケットボール、ホッケー、アメリカンフットボールのみですが、今後CBD解禁の流れは広まっていくことが予想されます。
2020年東京オリンピックにはCBDを利用する選手が出場するようになるのかもしれません。
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出典:Reuters