CBDまたはカンナビジオールは、現在最も重要な大麻化合物です。てんかん性発作の抑制、炎症軽減、慢性痛の緩和などは、報告されている利点のほんの一部です。しかし、研究者は驚くようなCBDの潜在的使用を調べています。それは、物質乱用および依存症の治療に対する薬物治療としての使用です。
聞き間違いではありません。「乱用の可能性がある」と言われているためにスケジュールI薬物に分類されている大麻に含まれる化合物が今、ヘロインからコカイン、アンフェタミン、タバコ、アルコール、大麻自体まで全ての依存症治療に対する有効性を検査するために複数の臨床試験の対象となっているのです。
CBDは中毒性も精神活性性も無く、1日最大1500mgまで安全に摂取することができ、依存者が体験する薬物への渇望や不安を軽減するように見えるという事実は、CBDが依存症回復プロセスを補助する無毒な方法として有望であることを意味しています。
依存症とは?
CBDがなぜ物質乱用障害の治療法としてこれほど関心を集めているのか理解するためには、依存症の本質についてまず知らなければなりません。
アメリカ医薬品委員会は依存症を次のように特徴付けています。「常に自制し続ける能力の欠如、行動の管理、渇望、行動を伴う重大な問題認知力の低下、対人関係における機能障害、ならびに情動反応の機能不全。他の慢性疾患と同様に、依存症は再発と回復のサイクルを伴うことが多い。回復活動への参加や治療をしない場合、依存症は進行性で、最終的に身体障害または早すぎる死をもたらすことがある」
渇望/再発サイクルを対象にする薬
依存症の治療において、最初の離脱症状期間後の渇望/再発を対象とするのが薬物療法の主な目的です。Narconon.orgによると、薬物への渇望を感じている依存症患者は、生きること自体が渇望を感じさせる物質の入手・消費に依存していると感じます。彼らは、その満足感と安堵を感じるためなら何でもする、または言うことは正当だと感じます」
科学者は、渇望症状が海馬などの脳部位に存在する神経伝達物質グルタミン酸塩の伝達増加によって仲介されることを発見しました。海馬とは学習・記憶に関わる脳の部位です。これにより、不安、イライラ、発汗、動悸などの渇望症状が禁欲後何年経っても起こる理由に説明がつきます。薬物に関連する記憶を刺激する場所または人物がいると、再発のリスクが高まるのです。
CBDは渇望を抑制できるのか?
これまで行われたほとんどの研究はヘロイン依存症に対するCBDの使用に関するもので、前臨床研究および小規模な試験研究のどちらにおいても有望な結果を示しました。CBDは最初の薬物投与の効果を変化させません(ヘロインの効果を強化することができるTHCとは異なる)が、 「合図に誘発される渇望」として知られる渇望を抑制することが観察されています。「合図に誘発される渇望」とは、喫煙者が喫煙と食事の終わりを関連付けるように、要因によって引き起こされる渇望の一種です。
二重盲検プラセボ研究で、ヘロイン依存者が3日間連続でCBDを1回投与されました。そしてCBD投与から1時間後、24時間後、7日後にオピオイド関連およびニュートラルな映像刺激にさらされ、渇望への傾向を検査しました。プラセボと比較して、CBDを摂取した被験者は渇望が低下したのを感じ、その効果は治療してから7日後も続きました。
不安症状の軽減
さらに、不安レベルの軽減も指摘されました。研究の著者は「オピオイド依存者のネガティブな状態を軽減するCBDの潜在的治癒効果は、渇望の軽減を予測し、従って再発行動の可能性を低下させる」ことを強調しました。これはCBDによる5HT1-Aセロトニン受容体の部分的活性化によるものである可能性があります。これがCBDによる一般的な抗不安および気分高揚効果の理由であると、科学者は考えています。
しかし、CBDがなぜ「合図に誘発される渇望」を抑制するのかはまだ明らかになっていません。過去のマウスにおける前臨床試験では、グルタミン酸塩伝達およびエンドカンナビノイドのシグナル伝達における変化がCBD投与後に正常化したことが分かりました。そして、この被験者がCBDを投与されてから7日間この変化が持続したという事実は、「シナプス可塑性における長期的影響」が起こっている可能性を示唆します。これは実質的に依存者の脳が、より長期的に渇望や再発を抑制する可能性がある再配線のような現象を経ていることを意味します。多くの依存者が体験する禁欲と再発の終わらないサイクルを目撃してきた人にとっては、ワクワクするようなニュースです。
タバコへの渇望もCBDによって緩和される
同様の調査結果が、タバコ喫煙者にCBDを含む吸入器を渡す、というロンドン大学で実施された研究でも観察されました。24人の喫煙者が採用され、CBDとプラセボの2つのグループに分けられました。どちらのグループも、タバコを吸いたいという欲求を感じた時はいつでも 吸入器を使用することが推奨されました。CBD吸入器を使用したグループは、変化が見られなかったプラセボのグループと比べて40%少なくタバコを喫煙したことが分かりました。
著者は次のように述べました。「CBDは合図の特徴を軽減するようだということが分かりました。またCBDは不安を緩和することができ、『再圧密』と呼ばれる記憶プロセスに影響する可能性があります。再圧密は、喫煙による報酬の記憶が他の喫煙者を見ることによって再活性化され、破壊が起こりやすくなります」
現在、コカイン渇望と再発におけるCBDの効果を調べる臨床試験も進行中です。
大麻依存症をCBDで治療できるのか?
とはいえ、依存症におけるCBD利用で最も驚きに値するのは、「大麻乱用障害」と名付けられた症状の治療においてでしょう。CBDは大麻に関連する刺激による「欲求」や「好み」を抑制することができることが分かっており、「CBDは大麻依存の治療において有望である」ことが示唆されています。
2012年に行われた、13歳から大麻を吸っていたというブラジルの19歳の患者における研究で、合成カンナビジオールを投与すると、被験者の離脱症状が数日後に緩和されたことが分かり、被験者はその後依存症を断ち切ることができました。
4週間にわたり、大麻使用を抑制するのに最も効果的なカンナビジオール投与量を調べるための無作為化試験がロンドン大学で実施中です。この試験の後に続けて、これが大麻依存の有効的な治療法となるか究明するために第2段階の臨床試験が行われます。
CBDは依存症によって引き起こされた脳損傷を修復する
深刻な依存症は身体を痛めつけますが、その上グルタミン酸塩受容体の過活性化によってもたらされるニューロンの進行性損失に関連する、長期的な神経変性も引き起こします。
CBDはアメリカ連邦政府によって、強力な抗酸化・抗炎症特性を持つことから神経保護剤として特許を取得しています。CBDのグルタミン酸塩伝達を抑制する能力もまた、アルコールまたは薬物関連の神経毒性によって引き起こされた損傷との闘いにおいて、特に興味深いものです。
げっ歯類モデルにおいて実施された研究において、CBDはアルコール中毒によって引き起こされた神経変性を軽減することが分かりました。5%CBDジェルを経皮投与したところ、内嗅皮質における神経変性に48%の軽減が見られました。これは「アルコールによって生じた神経変性の治療に関する、CBD経皮的伝達システム利用の実行可能性」を実証すると、研究者は提言しています。
大麻草に含まれる化合物が薬物およびアルコール中毒との闘いに役立つという考えは、最初は直観に反するものだったかもしれませんが、より大規模な臨床試験が行われれば、実際にカンナビジオールが物質乱用に関連する渇望/再発サイクルを抑制し、離脱症状を緩和することができるのか明らかになるでしょう。
