常に痛みを感じる生活を想像してみてください。極度の疲労を感じる上に身体中に火がついたように感じること。これが線維筋痛症の大まかな描写です。かつては活発だった人生が地獄のようになるのですから、多くの患者が気分の落ち込みやうつ、不安を感じるのも不思議ではありません。さらに複数の処方薬も症状を抑制できず、耐え難い副作用まで引き起こします。したがってますます多くの繊維筋痛症患者が、医療大麻、特にCBDに注目しています。
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線維筋痛症は謎の多い現代病
20年前、繊維筋痛症はほとんど知られていませんでしたが、今ではアメリカのリウマチ医学で最も一般的な診断となり、アメリカだけで約1000万人の患者がいます。繊維筋痛症は女性の方が高い有病率を持ちますが、その理由は誰も分かっていません。そもそも繊維筋痛症の原因もはっきりしていないのです。ストレスとの関連が示唆されていますが、それもまだ証明されていません。このため疾患自体が謎のままで、医療専門家は闇の中を手探りで進んでいる状態です。
よく知られている患者の症状の一致に、感覚処理の増大による痛みへの過敏症があります。また多くの患者が、偏頭痛、IBS、慢性疲労といった他の疾患にも苦しんでいます。ですから、繊維筋痛症の診断は死の宣告というわけではありません。どちらかというと、早期に解放される確率が相当低い終身刑の方が近いでしょう。
CBD:線維筋痛症フォーラムで話題
どこの繊維筋痛症フォーラムに行っても、とある自然療法が話題を集めています。CBD、またはカンナビジオールが大きな注目を集めているのです。一部の患者は、この非精神活性カンナビノイドのおかげで、全ての薬をやめることができた、と話しています。
鎮痛および抗炎症作用は、CBDの受け入れられている治療的有用性の2つです。しかしなぜCBDがこれほど興奮の渦を巻き起こしているのか本当に理解するには、身体のバランスを維持する恒常性調節機関、エンドカンナビノイドシステムについて考えなければなりません。
エンドカンナビノイドシステム不全は線維筋痛症を解き明かせる?
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは、睡眠、痛み、炎症、食欲、免疫系、気分、再生を最適に調節する受容体ならびに大麻に似た化学物質による複雑なネットワークです。ECSは、バランスと健康を維持するために身体の生物活動を上方調節・下方調節することや、減光スイッチに関連付けられてきました。
体内の他のシステムと同様、ECSはいつも油が補給された機械のように機能するわけではありません。研究者は、特定の病理に関連して過剰になったり、枯渇したりするエンドカンナビノイド量を観察してきました。とはいえ、エンドカンナビノイド活動が増加する場合は、それが病気によるものなのか、身体の自己治癒作用によるものなのか、はっきり分かっていません。
これは「臨床的エンドカンナビノイド欠乏症」と呼ばれる理論で、線維筋痛症のような説明が難しい多くの疾患について考えられる説明ができるのでは、と仮定されています。神経学者および精神薬理学研究者のイーサン・ルッソ博士が考案しました。ルッソ博士は、パーキンソン病やアルツハイマー病などの他の疾患が神経伝達物質欠乏に起因するのと同じように、十分なエンドカンナビノイドの欠如もまた、「予測可能な臨床的特徴」を伴う一部の臨床的障害を引き起こす可能性がある、と提言しています。
プロジェクトCBDと行ったインタビューの中でルッソ博士は次のように述べています。「数多くの非常に一般的な疾患が、エンドカンナビノイド欠乏症と一致するパターンに適合するという考えが浮かんだのです。これらの疾患とは、特に偏頭痛、過敏性腸症候群、線維筋痛です。これらの病気にはある共通点があります。これらは全て過疼痛症候群です。つまり、あるべき状態に比例しない痛みがあるように見える、ということです」
ルッソ博士は、枯渇したエンドカンナビノイドシステムを、CBDなど大麻草に含まれるフィトカンナビノイドで強化することを提案しています。
エンドカンナビノイド量の検査は簡単ではない
繊維筋痛症患者の症状はルッソ博士のエンドカンナビノイド仮説に適合するように見えますが、サイコニューロエンドクリノロジー誌に発表された研究では、線維筋痛症患者は実際エンドカンナビノイドであるアナンドアミド、およびストレスホルモンのノルエピネフリンの血漿中濃度が高いことが分かりました。
線維筋痛症におけるエンドカンナビノイド欠乏症理論の信ぴょう性を確かめる明らかな手段は、患者のエンドカンナビノイド量を調べることです。しかし現在、そのプロセスは腰椎穿刺や組織サンプル採取を伴い、かなり侵襲的です。それに加え、エンドカンナビノイドは体内で生成され、また素早く分解されるので、全体なエンドカンナビノイド量の測定はほぼ不可能なのです。
研究から分かる医療大麻の症状緩和効果
だからと言って、大麻草に含まれるフィトカンナビノイドが線維筋痛症の症状に対して治癒効果を持つことを示す、事例的および科学的証拠が相次いでいることの価値は損なわれません。2011年に発表されたアンケートを基にした研究では、大麻を定期的に使用する患者と使用しない患者の体験を比較しました。その結果、「痛みおよび硬直の統計的に大幅な軽減、落ち着きの強化、ならびに眠気、幸福感の増加が見られた」ことが分かりました。
国立疼痛基金によるさらなる調査では1300人の線維筋痛症患者にインタビューし、「食品医薬品局が線維筋痛症治療のために承認した3つの処方薬のどれよりも医療大麻の方がはるかに有効である」ことが分かりました。大麻を試した患者のうち62%が症状の緩和に有効だった、と述べています。
ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・クリニカル・ファーマコロジー誌に発表された科学論文「慢性的非がん疼痛治療におけるカンナビノイド:無作為化試験の系統的レビュー」の中で著者は、「試験対象患者基準に適合する18の臨床試験のうち15で、プラセボと比較してカンナビノイドは大幅な鎮痛効果を実証し、また複数で睡眠における大幅な改善が報告された」ことを発見しました。
40人の線維筋痛症患者に対する合成THC薬ナビロンの使用を検査したランダム化二重盲検プラセボ対照試験は、「ナビロン繊維筋痛症患者にとって有益で、耐容性良好な治療オプションであるようで、疼痛および機能改善において重大な利点をもたらす」と結論付けました。
線維筋痛症患者のCBDに関する意見
では、医療大麻が合法ではない、もしくは線維筋痛症が対象疾患ではない地域に住む患者はどうすればいいのでしょうか?その多くは、CBDとして知られる非精神活性カンナビノイド、カンナビジオールを摂取することで症状を緩和しています。
線維筋痛症ブロガーのドナ・グレゴリーは、CBDを試した体験談をシェアしています。
「オイルが届いてから、私は6〜8時間ごとにCBDオイルを舌下投与しました。その24時間後の変化には驚きました。3回目の投与後に、下肢の痛みが大幅に軽減したことに気がつきました。次の週もCBDオイルを舌の下に投与し続けました。すると大半の痛みが緩和されたのです。同じような体験をした線維筋痛症患者の友達もいます」
イギリス人の元集中医療看護師ジョー・アレンは今、短距離以外は車椅子を使用しなければなりませんが、CBDがさらに微妙なレベルで効果を示すのを体験しました。
「CBDは間違いなく役に立ちます。今は睡眠薬無しで眠れます。オキノームの離脱症状にも役立ち、症状を大幅に軽減してくれました。CBDは穏やかな効果なので、振り返ってみたときにやっと、確かに効いていたと感じるほどなんです」
CBDと線維筋痛に関する研究を強化するべき?
線維筋痛症の症状改善におけるCBDの有効性を報告する事例報告数にもかかわらず、これまでのところTHCベースの薬を用いた無作為化臨床試験しか実施されていないのは驚きです。間違いなく今こそ、多くの患者が個人体験を通じて知ったこと、すなわちCBDが豊富な大麻オイルが繊維筋痛症の痛みを効果的に軽減し、潜在的に有害で依存性の強いオピオイドベースの治療薬を減らすことを可能にしたという付加利益もあるということを正式に証明するべきです。
