エンドカンナビノイドの生合成と不活性化

アナンダミドも2-AGも不緩和脂肪酸であるアラキドン酸からできているが、アラキドン酸は細胞膜内のリン脂質に一般的にみられる脂肪酸の一種である。興味深いのはアラキドン酸が、脂質メッセンジャーの別のグループ、プロスタグランジンとロイコトリエンの重要な成分であることである。

アナンダミドと2-AGがこれらかのエンドカンナビノイドを生み出す細胞内でどのように合成されるのかは、いまのところわかっていない。プロスタグランジンやロイコトリエンの場合と同じように、エンドカンナビノイドも細胞内に貯められて放出に備えるんではなく、必要に応じて合成される。

神経細胞が神経を興奮させる性質をもつアミノ酸であるLグリタミン酸塩に触れた場合などに活性化すると、脳内のアナンダミドや2-AGの生合成率が高まることはすでに知られている。ジュフリーダらは、アナンダミドが生体の脳から放出される過程を、ラットの脳に挿入された高精度のマイクロプローブを使って初めて実証したことを報告している。

彼らはアナンダミドの放出が、科学的伝達物質であるドーパミン専用の受容体が活性化することによって刺激される事実を突き止め、アナンダミドは彼らが使ったドーパミン様薬剤の行動刺激的効果を阻害するように思われることから、これが自動減滅システムの働きである可能性をほのめかした。

2-AGはアナンダミドより量的に多く存在しているものの、ジュフリーダらは上記の放出実験で検知可能な量の2-AGを確認していない。

生合成の経路の詳細はまだ十分に突き止められていないが、2-AGは前からあるアラキドン酸を含む膜脂質が一部加水分解された結果生じるものと思われ、一方アナンダミドは、エステル化された3-リン脂質のN-アラキドニルホスファチジルエタノラミンとして膜脂質の貯蔵庫に貯められている可能性がある。

アシル・トランスフェラーゼの酵素としての働きにより、アラキドン酸は1-ジアラキドニル-グリセロホスフォリピドから3-スファチチジルエタノラミンへと変えられ、NAPEが生成される。これがホスホリパーゼDによって加水分解されてアナンダミドが放出されることになる。

NAPEはいわば前駆体的な役割をもつと考えられ、脳などの組織内でアナンダミドよりはるかに多く検出される。アシル・トランスフェラーゼやホスホリパーゼDの特異的生成が、ここで想定されるアナンダミド生合成の経路にかかわっているかどうかは知られていない。

ほかの生物学的メッセンジャー分子と同じように、エンドカンナビノイドは生成・放出されたあと急速に活性を失う。アナンダミドはも2-AGも、加水分解酵素によって簡単に分解されてしまう。脂肪酸アミド・ヒドロラーゼとして知られる酵素がこのさい、需要な役割を担っているものと思われる。これはアナンダミドと2-AGをともに加水分解することができるからである。

精製FAAHに対する抗体を使ってラットの脳の一部を免疫組織化学的に染色する実験によって、この酵素(FAAH)がCB-1受容体を高い密度で有する部分にもっとも集中していることがわかった。この分解酵素は、シナプス前のCB-1受容体を有する軸索終末からシナプス後部に位置する神経単位にとくに集中的に分布している可能性がある。

酵素はクローン化され、番号付けをされた結果、セリン加水分解酵素に属することが判明している。セリン加水分解酵素の阻害物質であるフェニルメチルスルホニルフッ化物(PSM)はこの酵素を阻害し、培養液にPSMを加えることで、ガラス管を使った結合分析または機能分析でアナンダミドの親和性を10倍以上高める結果になるが、この事実は酵素による分解がアナンダミドの生物学的活性を制限するに十分な速さおもっていることを物語っている。

アナンダミドの急速な分解はまた、それが生体に投与されたさい、比較的弱い、一時的な作用しかもたらさないことを示している。こうした実情がもとになって、現在までに数々の代謝的により安定した誘導体が合成されている。

例えば、アナンダミドにメチル基を加えてメチル-アナンダミドとするだけでアミド類とのつながりを安定させ、CB-1受容体に対する活性を維持し、生体内の効力や持続性を著しく向上させた分子を生み出すことができる。このほかにアナンダミドについても2-AGについても、数々の安定した誘導体が現在まで作り出されている。

脂肪酸アミド・ヒドロラーゼ(FAAH)は脂肪内の酵素で、特異的な輸送体蛋白質が存在してアナンダミドと2-AGは代謝を行うことが可能になる。細胞内へ物質を取り込む同様のメカニズムは、モノアミンとアミノ酸の神経伝達物質が非活性化するさいにも見られ、いまやこのようなメカニズムは精神活性薬の開発にあたって重要な標的となっている。

たとえば、抗鬱剤フリオキセチンは、セロトニンの取り込みを阻害し、脳内のセロトニン受容体への作用より効果的にながら働くようになっている。エンドカンナビノイド輸送体や脂肪酸アミド・ヒドロラーゼもまた、新薬発見のための標的となることが考えられる。

エンドカンナビノイドの非活性化を選択的に阻害する化合物ができれば、カンナビノイド薬理学への新たなアプローチとなり、カンナビノイドの機能を高めることになる。

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出典:マリファナの科学