近年、美容やダイエットのために、ココナッツオイルやオリーブオイルが注目されていますが、それ以上に効果が期待されているのが、ヘンプシードオイルです。
特に、アトピー性皮膚炎の改善効果が注目されています。ここでは、そのヘンプシードオイルの特徴とその効用をまとめてご紹介します。
目次
ヘンプシードオイルとは
①ヘンプ(麻)という植物
ヘンプシードオイルは、ヘンプ(Cannabis Sativa L./Hemp)の種子から抽出したオイルで、麻実油とも言われるライトグリーンのオイルです。
ヘンプシードオイルの原料となる、ヘンプ(麻)は中央アジア原産のアサ科アサ属の植物で、麻、大麻、大麻草とも呼ばれています。
麻薬として使用される大麻も、ヘンプと同じ大麻草(学名:カンナビス・サティバ (Cannabis sativa))ですが、大麻に用いられるものとヘンプは品種が異なります。
同じコメの中で、コシヒカリとあきたこまちの違いのようなものです。
しかし、麻薬に用いられる大麻とヘンプでは、含まれる成分に大きな違いがあります。
最も大きな違いが、高精神作用が有り酩酊感をもたらすテトラヒドロカンナビノール (THC)の含有量です。
麻薬として用いられる大麻にはTHCが20%以上含まれていますが、繊維を利用するために品種改良されたヘンプのTHCは1%未満です。(産業用のヘンプはEU諸国では、THC含有量0.2%以下、カナダでは0.3%未満の品種と定められています)
そのため、日本では栽培が禁止されており、ほとんどが輸入に頼っています。
②ヘンプ(麻)の利用
ヘンプ(麻)は、様々な用途に利用されています。
ヘンプ(麻)の繊維は夏向けの肌触りの良い生地として広く用いられている他、繊維を利用した麻紐(ヘンプ糸)は、最近では様々なカラーのものが市販されており、バッグやアクセサリーなどの手芸材料としても人気があります。(ただし、衣類に使われている麻は、リネン(亜麻)またはラミー(苧麻)の繊維から作られているものが一般的です。ヘンプを用いた衣類は、表示上は「指定外繊維(ヘンプ)」となっており、衣類の材料としては、まだまだそれほどメジャーではありません。)
また、ヘンプシードオイルの他に、麻の実そのものも食用に用いられています。七味唐辛子の中にも、麻の実が入っているので、食べたことのある人も少なくないはずです。
③ヘンプシードオイルの抽出
ヘンプシードオイルは麻の種子(ヘンプシード)から、圧搾法により抽出されます。
圧搾法は、脂質の多い原料から油脂を得るための方法で、原料に圧力をかけて、油を搾り取る方法です。溶媒を用いる抽出方法と比べて、溶剤が残るリスクも少なく、成分がそのままの状態で抽出されます。
ヘンプシードオイルの成分
①必須脂肪酸
体の中で合成できないために、食品から摂取しなければならない脂肪酸を必須脂肪酸といいます。
ヘンプシードオイルには、リノール酸やα‐リノレン酸、γ‐リノレン酸などの必須脂肪酸の仲間が豊富に含まれています。
ヘンプシードオイルに含まれる総脂肪酸の約80%が必須脂肪酸であるとの報告もあります。
必須脂肪酸は体に必要な脂肪酸ですが、近年の研究では、オメガ6系のリノール酸の摂り過ぎはアレルギーやガンの摂り過ぎになることが明らかとなっており、オメガ3系の脂肪酸とオメガ6系の脂肪酸の比率を、1:2~1:4にすることが推奨されています。
通常のサラダ油の多くは、ほとんどがリノール酸ですが、ヘンプシードオイルは、オメガ3系のα‐リノレン酸とオメガ6系のリノール酸の比率が1:3と、理想的なバランスになっています。
また、γ‐リノレン酸を2~4%程度含んでいることも、ヘンプシードオイルの大きな特徴です。
γ‐リノレン酸は天然の食品にはあまり含まれていませんが、体内でプロスタグランジンに変換され、コレステロール値、血圧、血糖値を調節します。
また、アレルギー反応の調整や子宮筋の調節など様々な生体機能の調整にも働いており、イギリスやフランスなどのヨーロッパの国々の中には、γ‐リノレン酸を医薬品としてアトピー性皮膚炎の治療に用いている国もあります。
②ビタミン類
ヘンプシードオイルには、ビタミンAやビタミンEなどの脂溶性ビタミンが豊富に含まれています。
また、ヘンプシードオイルは圧縮抽出により得られるため、ビタミンCなどの水溶性のビタミンも豊富に含まれています。
③その他の成分
ヘンプシードオイルは、圧縮抽出方で抽出しているために、様々な栄養成分を含んでいます。
日本人が不足しがちな銅、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれているほか、良質なアミノ酸もバランスよく含んでいます。
また、ヘンプシードオイルには水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維がバランスよく含まれています。
ヘンプシードオイルの効能
①アトピー性皮膚炎の改善
ヘンプシードオイルで、最も効果が期待されているのが、アトピー性皮膚炎の改善です。
ヘンプシードオイルにはオメガ3系の脂肪酸とオメガ6系の脂肪酸がバランスよく含まれているため、アレルギー症状の改善に役立ちます。
また、γ‐リノレン酸もアトピー性皮膚炎の改善に効果がある他、ビタミンAは、皮膚細胞の再生を促し皮膚を強くする効果があります。
②ダイエット効果
ヘンプシードオイルに含まれるα‐リノレン酸には、脂肪の燃焼を促進し、血中のコレステロール値を低下させる働きがあります。
③美肌効果
ヘンプシードオイルには、皮膚細胞の再生を促し、皮膚の健康維持に働くビタミンAを豊富に含まれています。
また、お肌を紫外線から守り、シミやシワを防ぐ働きのあるビタミンCや、抗酸化作用が強く、肌の老化防止に効果があるビタミンEも豊富に含まれています。
さらに、リノール酸は髪や肌の保湿に欠かすことのできないセラミドの原料です。
保湿効果も期待できますので、マッサージオイルをしてスキンケアに用いられる他、ヘアケアにも用いることができます。
④生活習慣病の予防
ヘンプシードオイルは様々な生活習慣病の予防に効果があることが期待されています。
ヘンプシードオイルに豊富に含まれるα‐リノレン酸には血液をサラサラにする効果があるため、血圧を下げ、動脈硬化や脳梗塞などを予防してくれます。
⑤認知症予防
ヘンプシードオイルに豊富に含まれるα‐リノレン酸は、体内で多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に変換されます。
これらの脂肪酸は、サバやイワシなどの青魚に多く含まれ、脳の神経細胞を活性化させ記憶力を向上させる効果があります。
そのため、認知症予防の効果が期待できます。
ヘンプシードオイルの使い方
エッセンシャルオイルは、刺激が強く、アレルギーの原因となる場合もあるため、通常は他のキャリアオイルに1~2%をブレンドして使用しますが、ヘンプシードオイルはキャリアオイルとして用いることができ、そのまま、マッサージなどに利用することができます。
また、皮膚に塗るだけでなく、料理に用いることもできます。ただし、ヘンプシードオイルは酸化しやすいオイルなので、ドレッシングなどで加熱せずに利用するのがおすすめです。
以上のように、ヘンプシードオイルは美容や健康のために、様々な効果が期待できます。
マッサージオイルとしてスキンケアやヘアケアにも、食用としても用いることができるヘンプシードオイルですので、自分の生活スタイルに合わせて取り入れてみてことをおすすめします。