ブームを牽制?集団訴訟の嵐がCBD業界を脅かす

米国食品医薬品局(FDA)は、「CBD」として知られているカンナビジオールを含んだ栄養補助食品が合法かどうか、結論を出せないでいます。ではそんな中、合法的な製品を買ったと思っている消費者たちは、それに対し返金要求をできるのでしょうか?

自責の念に駆られたCBDユーザーの集団が、その問題を検証すべく訴訟を起こし、数社の企業を追い詰めています。その会社はどれも、CBDを世界に知らしめた大手企業です。

CBD大手企業に起こされた訴訟― 虚偽のマーケティング?

先日、シャーロット・ウェブと、CVサイエンスという国内最大手のCBD生産会社2社に対し2つの訴訟が起こされました。消費者側は、それらの企業がCBD商品をビタミンCや鉄分のような、ありふれた栄養補助食品として喧伝し、「誤った、不正で、不公平で、端から人を騙すつもりの、誤解を招くような」マーケティングを行ったと主張しています。また既出の2社ほどの大手ではないものの、やはりCBDの生産者であるインフィニートCBDとグリーン・ロードという、少なくとも他2社に対してもこれと似たような訴訟が起こされています。

これら全ての訴訟において、原告は裁判官に対し、こういった企業がCBD商品によって得た全ての利益を返却することを求めています。もしそれが認められれば、この始まったばかりの産業はすぐさま死に絶えることになるでしょう。

「その意味するところは大きい」そう語るのは、ナチュラル・プロダクツ・アソシエーション(NPA)のCEO、ダニエル・ファブリカントです。こういった企業が訴訟に負ければ、「CBD産業が全てなくなるとは言わないまでも、概ね駆逐される、というところまではいくでしょう」

壊滅へと続く道を拓きかねないこれら一連の訴訟は、昨今のCBD業界にとっては苛立たしい情勢です。CBDへの関心が急上昇するに伴って収益も何百万と急増しているにも関わらず、CBDの生産者たちはこの大人気商品の合法的な販売ルールがきちんとFDAによって策定されるのを、なんと一年以上待たされているのです。生産者たちは、このように訴訟が多発してしまうのは、FDAによるルール策定に時間がかかっていることに起因し、実際にFDAが行動を起こすまではこのネガティブな影響は拡がり続けるだろうと語ります。

「FDAがCBDの規制について正式な骨組みをきちんと定めるまでは、この種の訴訟は多発するでしょう。FDAが為すべきことをなすまでは」そう語るのは、USヘンプ・ラウンドテーブルの最高顧問弁護士であるジョナサン・ミラーです。USヘンプ・ラウンドテーブルは、ヘンプとCBD生産会社の同業者組合であり、シャーロット・ウェブや、CVサイエンスもメンバーとして含まれています。

集団訴訟は、近年ますます栄養補助食品ビジネスの一側面となってきています。ここ数カ月で起こされた訴訟の中には、例えば、科学的根拠なく「筋肉の肥大を宣伝した」商品を消費者が訴えたものや、「グルコサミン硫酸塩」とされていた商品が実際には(申し立てによると)効果が少ないと言われているグルコサミン塩酸塩が入っていた、という訴訟など多岐にわたり、消費者は幅広く栄養補助食品会社に対し訴訟を起こしています。

実際、法律事務所のパーキンス・コーイーの報告によれば、栄養補助食品を含む集団訴訟の件数は、2017年から2018年にかけて倍増しています。

しかし、CBD生産者はこれまでのところ、この種の集団訴訟は避けることができていました。それは恐らく、CBD市場がまだ誕生したばかりである、ということが理由でした。この業界の擁護者たちは、この種の訴訟がいつか起きることを予期していたと言います。言ってしまえばこれは、「バル・ミツワー(ユダヤ教徒の男子が成人したときに行われる通過儀礼)」なのだ、とジョナサン・ミラーは言いました。

そういう意味では、この業界における最初の主要な訴訟がシャーロット・ウェブを標的としたのも妥当です。同社は、2013年にCNNが、CBDが6歳のシャーロット・フィギーの発作の治療にいかに効果を発揮したかを特集したことによって、全国的にCBDへの関心を呼び起こしました。

シャーロット・ウェブは今やCBD市場の大半を支配し、年間の歳入は7000万ドルに及んでいます。同社はCBDや大麻を支持するコミュニティから喝采を浴びている存在です。フィギーに至っては、最近、High Times誌の表紙まで飾りました。

CVサイエンスも遅れをとってはいません。同社は、最新の納税申告によると2018年に4800万ドルものCBD商品を売り上げました。サンディエゴに拠点を置く同社は、CBDを原料とする薬の認可をFDAから得ようと試みている、数少ないメーカーの一つでもあります。現在は、CBD配合の禁煙ガムの前臨床開発中です。

常にリスクと戦ってきたCBD業界

また、CBDの生産者はリスクには慣れっこでもあります。シャーロット・ウェブや、CVサイエンスのような企業は、既に何百万ドルもこの産業に投資してきていますが、この産業自体が、2018年までは違法でした。結果として、彼らのような企業は銀行との取引を拒まれたり、荒くれ者の保安官に商品を押収されたりといったこととも戦ってきました。

ヘンプ・ラウンドテーブルのミラーは言います。「リスクを取りたくないというのであれば、このビジネスには手を出してはいけません。今日、ヘンプやCBDにおいてゼロリスクなんて存在しませんよ」

そして今まさに問題となっている明確なリスクというのがこの最新の集団訴訟ですが、そもそもそのリスクは防ぐことができたはずだと業界の擁護者は語ります。栄養補助食品として売られているCBD商品ですが、FDAはCBDを医師の処方箋が必要な商品とみなしているため、厳密に言えばサプリメントとしての販売は違法なのです。しかしFDAは、CBD企業がCBD商品を処方箋なしで売ることを可能にする方法を考案するという約束はしました。

CBD企業は、FDAに対して少しでも早くその方法を示すように何カ月も前から要請し続けてきました。CBD業務を率いるFDA最高責任者は、以前に2019年の夏または秋にいくつかのガイドラインが出されることを約束していましたが、その期限は守られていません。

NPAとヘンプ・ラウンドテーブルは、FDAのペースの遅さに苛立ちを抱え、現在議会による法的措置を要請しています。彼らは、もしFDAがもっと明確なルールを初めから制定していれば、このように集団訴訟にいともたやすく攻撃されることにはならなかっただろうと主張し、また、その訴訟はFDAが遅延したことによって引き起こされた損害であると主張しています。

「FDAはこの件について保健機関としての責任がありますから、こういう言い方は何ですが、局が義務を怠ったために原告団がそれを攻撃材料としているのです」NPAのファブリカントはそう語りました。

これらの集団訴訟で誰が勝訴するかはまだ分からない

FDAは既に、消費者に対して現状「栄養補助食品」というラベルを貼ることは違法であると警告しており、これらの企業はまさにそのために訴えられています。

しかし消費者にとって、勝利が確約されているとも言い切れません。CBD商品の法的見地はまだ結論が出ていません。FDAはこれらの商品について消費者に警告を出した一方で、公式な方針を公開しているわけでもなく、寧ろその方針の制定に向けて、今引き続き取り組んでいる、ということが明らかになりました。

栄養補助食品の業界団体の代表者であるファブリカントは、その訴訟の勝算は50-50であると語りました。

訴訟に関して楽観的な考えも

「こういった訴訟の被告人たちは、まだ小切手帳を出す必要はありませんよ」そう語るのは、ステップトー&ジョンソン弁護士事務所で正弁護士を務める、アンソニー・アンスコンビーだ。彼は集団訴訟弁護の専門家です。CBDの訴訟には関わっていませんが、彼によれば、確かにこれらの企業はFDAのルールを破っていると言えるかもしれないが、それは必ずしも消費者がCBD商品から価値を得ていないことを意味しないと主張しています。

どの企業もまだ訴訟に対し正式に応答したり、裁判官の前で主張を提示したりはしていないため、彼らがどのような弁護を展開するかは未知数です。

先月発表された声明では、シャーロット・ウェブは「商品は正確にラベルを貼られたものであり、訴訟上の請求には法的根拠がないと考えている」とし、「当社は精力的にそのような訴訟に対し弁護を展開する」と付け加えました。

CVサイエンスのCEO、ジョセフ・ダウリングは「根拠のない集団訴訟は、消費者の安全を否定的に脅かし、この部門の商品の未来に向けた規制の骨組みづくりを妨げるものだ」と言って訴訟を批判しました。

CBD企業にとって高いリスク

両方の訴訟において消費者たちはCBD栄養補助食品から得た利益の全額返金を要求しています。どちらの会社にとっても、それは数百万の小切手を切ることを意味します。それは事実上、これらの企業を滅ぼすことになるでしょう。

しかしもし実際にそうなれば、CBDの擁護者たちは、それでも希望があるだろうと予測します。その結果、最終的には議会とFDAがCBDの規制を策定するのをスピードアップする可能性がある、ということです。企業が利益返却を強制される可能性についてミラーは、「そうならないことを真に望みますが、準備はしなければなりませんね。また、もしそうなれば、議会も行動を起こすことを強いられるはずです」と語りました。

「もし実際に何らかの理由でCBDの販売が脅かされれば、大衆がデモを起こすことになるでしょう」彼はそう付け加えました。

出典:STAT