先週、GWファーマシューティカルズ社によるCBDベースの薬剤エピディオレックスの臨床試験第3段階の結果が発表され、小児てんかんにおけるCBDの発作抑制力が改めて認知されました。この研究では平均して40%の発作減少が見られました。大麻ベースの薬が認可されるのには十分な数値です。てんかんを患う子供の両親にとっては喜ばしいニュースでしょう。しかし、科学者が30年前から認知していたことを確認するのに、なぜこれほど時間がかかったのでしょうか?
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CBDとてんかんに関する先駆的試験が行われたのは1980年
1980年、ラファエル・メコーラム教授は、てんかん患者に対するCBDの有効性を調べる小さな二重盲検試験の研究主任でした。その試験の期間、被験者の半数が発作を起こしませんでした。研究報告書では、より多くの人数の患者におけるさらなる研究が必要である、と結論付けられましたが、GWファーマセウティカルズ社が登場するまで、さらなる臨床試験は行われませんでした。
カンナビノイドとてんかんに関する最初の研究
メコーラムの研究が、カンナビノイドが人体で試験された最初の研究だったと考えているなら、それは間違いです。発作を止めるために大麻が使用されてきた記録は11世紀から存在しますが、西洋においてそれが正式に記録されたのは19世紀に入ってからです。ウィリアム・ブルック・オショーネシーの仕業によるものでした。
しかし、約半世紀前に大麻が連邦麻薬局長ハリー・アンスリンガーによる中傷的な運動の対象となる前に、1件だけ人体試験が行われています。1947年にジーン・P・デイヴィス医学士およびH・H・ラムジー医学士によって実施されたこの研究は「大麻の活性物質による抗てんかん作用」と題され、カンナビノール(CBN)の合成版による抗けいれん効果を証明しようとするものでした。
5人の子供において実施されたこの研究は、当時ソルトレイク・シティーのテレグラム紙が報道しました。それには次のように書かれています。「この薬は約50%有効であることが分かりました。てんかんの未来は『非常に明るい』でしょう。なぜなら、たった一つの新薬だけでなく、てんかん発作に有効な新たな化合物が全分野あるからです」
しかし研究チームの興奮は長続きしませんでした。連邦麻薬局から望まぬ注目を浴びてしまったからです。言うまでもありませんが、1980年のメコーラム教授によるCBD試験まで後続する研究は行われず、この試験自体が巧妙に埋もれてしまいました。
CBD薬開発に時間がかかった理由
アンスリンガーによる大麻草に対する確執を、過小評価することはできません。ラリー・スローマン著『リーファー・マッドネス:アメリカにおける大麻の歴史』によると、アンスリンガーは医療大麻試験ができないようにするための独自の手段を持っていました。引退した地方職員がこう明らかにしました。
「ハリーは、そのような要求に対応するために評判のいい化学者を特別デスクに配置していました。とにかくその化学者はアンスリンガーの望みを理解していたので、 連邦政府による医療研究の許可を求める申請がくると、それが大麻に関するものであれば、必ずそれを否定する科学的理由を見つけました」
その後まもなく1961年に、大麻は「医療用途は認められず、非常に高い乱用の可能性がある」としてスケジュールI薬物に指定した国際連合による麻薬に関する単一条約が発表されました。
エンドカンナビノイドシステムを専門とする、フロリダ州エッカード大学の生物学助教授グレッグ・ジャードマンは、このスケジュールIという分類は医療大麻研究に膨大な意味合いをもたらすと言います。
「この問題に向き合いましょう。社会政策アジェンダとして、大麻の悪魔化は広く成功しました。この見解は数十年にわたってNIH(国立衛生研究所)資金構造によって増強されました。NIHは今でも大麻ならびに全構成成分をスケジュールI薬物に指定する、全く不適切な分類を受け入れています」
「80年代、90年代を通じて、大麻またはカンナビノイド研究に対する唯一の資金はNIDA(国立薬物乱用研究所)の後援によるものでした。したがって研究仮説は薬物乱用および中毒のパラダイムを研究するものでなければなりませんでした」
CBD臨床研究に関する進展不足を説明するもう一つの要因は、CBDが精神活性作用を持つTHCと比較して無害な本質を持つことでした。
「カンナビジオールはNIDAの資金優先順位に適合しなかったのです。CBDの価値は(偏見のある)期待に反するものであり、またCBDに関する研究論文は事情に少なかったからです。初期の研究はあまり注目を集めなかったのだと思います」
このため、CBDの抗発作特性は、GWファーマシューティカルズ社が現れるまで、臨床環境において広く調査されませんでした。
初の医療大麻製剤会社GWファーマシューティカルズ社
GWファーマシューティカルズ社は「植物性カンナビノイド治療法の開発」に特化したイギリスの製剤会社です。1998年に設立され、すでに多くの国々(アメリカを除く)に出回っている大麻系医薬品サティベックスを販売しています。
ピュアな植物性CBD(98%)の経口薬剤であるエピディオレックスは、ドラベ症候群やレノックス・ガストー症候群といった稀な小児てんかんを治療するために開発されました。エピディオレックスは、薬剤にとって究極の判断基準であるランダム化二重盲検プラセボ対照試験において、良好な結果を見せています。
FDAによるエピディオレックスの承認は、現在のCBDオイル市場にどのような影響をもたらすでしょうか?これらの比較的良好な結果をふまえ、FDA(食品医薬品局)によるエピディオレックスのアメリカにおける認可は現実となりそうです。2014年の法案により、CBDベース薬が急速に発展したことを考慮するとなおさらです。そしてアメリカで起こることは素早く世界に広まります。
これはCBDが受けるべき公認を得ることを意味するはずですが、これは正しいことでしょうか?
それはあなたがどちら側にいるかによります。GWファーマシューティカルズ社は、エピディオレックスの開発に数百万を注ぎ込んできました。エピディオレックスが成功すれば、初の認可されたCBD薬剤となります。そしてGWファーマシューティカルズ社が注ぎ込んだ時間と投資の代償として、CBD製品を健康補助食品として販売している数百のCBD企業を取り締まるようにFDAに働きかけるのではないか、と推測されています。
しかしそれらCBDオイル製品の一部こそが、シャーロット・フィジー、ケイトリン・ランバード、エイヴァ・トゥーメイといった子供のてんかん発作を劇的な抑制したことで注目を浴びた製品なのです。
この子供たちは皆、全草から抽出された製品を摂取しました。つまり、製品には多くのCBDが含まれているが、その他微量のカンナビノイドやテルペンも含んでいる、ということを意味します。全草大麻薬の方がカンナビノイド単体のものよりも効果的であることを示す研究がありますが、その複雑さのため特許を得たり、FDAに承認された標準薬にしたりすることはほぼ不可能です。
ドラベ症候群を患う子供の母親が全草CBDを選ぶ権利を主張
ドラベ症候群を患うエイヴァ・バリーの母ヴェラ・トゥーメイは、全草CBDオイルが娘にとって最適であることを信じています。エイヴァの発作はCBDオイルを摂り始めてから、90%減りました。エンドカとのインタビューで、ヴェラは次のように話しています。
「私は個人的な体験から、エピディオレックスの研究結果はこれまでのCBDオイルが患者にもたらした影響には遠く及ばない、と言えます」
ヴェラは全草CBDオイルが市場から無くなることを懸念して、次のように述べました。
「全草CBDオイルの無いエイヴァの人生は、恐ろしい現実です。全草CBDオイルで人生がいい方に変わった子供を持つ親は、立ち上がって『ノー』と言わなければならなくなるでしょう。もしこれが現実となれば、私たちのような家族が子供と共に達成してきた大切な進歩の破壊を意味するでしょう」
